国の特別天然記念物・ライチョウを長野県の中央アルプスで復活させる作戦が「最終章」へ向けて動き出した。昨夏、北アルプスで保護したライチョウを中央アルプスに移送。今年は、新たに誕生する家族を動物園に移送し、安全に繁殖させる計画だ。来年以降、さらに増えた家族を野生に復帰させて、完全復活をめざす。19日にあった環境省の会議で決まった。(近藤幸夫)
ライチョウの生息数は1980年代には約3千羽とされたが、現在は約1700羽まで減ったとみられている。テンやキツネなどの天敵が高山帯に侵入し、卵やひなを捕食するのが大きな要因とみられる。中央アルプスでは半世紀前に絶滅したとされる。
復活作戦は2019年夏に始まった。中央アルプス・木曽駒ケ岳で半世紀ぶりにメス1羽が確認されたのがきっかけだ。環境省は、ライチョウの世界的研究者の中村浩志・信州大名誉教授を中心に、25年には永続的な繁殖が期待できる60~100羽に増やす計画を定めた。
19年は北アルプス・乗鞍岳で採取した有精卵をこのメスに抱卵させ、孵化(ふか)させたが全滅。昨年もまた失敗した。一方で、昨年8月、乗鞍岳から3家族19羽を木曽駒ケ岳に移送する計画は成功した。このメスを含め、山頂付近では20羽のうち多くの個体が生き延びているとみられる。
今年、中村さんたちが取り組む作戦は、20羽(若鳥16羽、成鳥のメス4羽)から誕生した家族のうち2家族を、茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県那須町)にそれぞれヘリコプターで移送し、繁殖させるというものだ。
ライチョウは誕生した翌年から繁殖が可能だ。動物園なら安定的に家族を増やし続けられ、それぞれのオスを交換することで近親交配も避けられるというわけだ。増えた家族は中央アルプスに野生復帰させる。
ただ、ライチョウは孵化後1カ…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル