「おさがり」は究極のSDGs――。愛媛県伊予市で子ども用品専門のリサイクルショップ「metome(みとうみ)」を営む逢沢亜月さん(45)の信念だ。コロナ禍で厳しい経済状況にある保護者を支えようと、2月1日、伊予市灘町の商店街に、学用品専門の2号店を3月末までの期間限定で開いた。
――ランドセルが800円、鍵盤ハーモニカは600円。なぜこんなに安いのですか
商品はすべて寄付で集めたので、仕入れに人手がいらないからです。それに、売値は私の主婦感覚。コロナで中止になった、学校や幼稚園のバザー価格です。
過去の自分を助けるつもり、というのもあります。東京から愛媛に移住したころ、私は超絶貧乏だった。大手の通信会社でキラキラと働いていたときに比べると「どん底」でした。
長女が小学校に入るとき、お道具箱をはじめ、いろんなものが必要だった。まわりの人を頼ると、何から何まで、おさがりでそろったんです。
うれしかったし、助かったと思った。だからバザーが復活しない今は、この値段にしています。
――寄付で商品を集めるというアイデアはどこから生まれたんですか
2、3年前かな。カナダのバンクーバーを訪ねたとき、大きな倉庫ぐらいの場所に構えたリサイクルショップに行きました。活気があって、なんでもそろう。寄付で集まっているのに、宝石もあるんですよ。欧米では結構広がっているんですよね。
カナダでの経験と、自分がおさがりを集めた経験が、頭の中でパズルのようにはまって「寄付型のリサイクルショップ」を愛媛で始めようと思いました。
――寄付でいいものが集まるのでしょうか
1号店を始めるとき、まわりから「ゴミが集まる」と言われました。でも、絶対に大丈夫だと思っていました。みんな結構、「誰かに親切にしたい」と思っているんです。
予想外だったのは、めちゃくちゃいいものが集まること。申し訳なくなって、「自分で売ったら?」と聞いても、「かまんかまん」と寄付してくれます。
――おさがりがSDGs(国連が唱える「持続可能な開発目標」)とは、どういうことでしょうか
ちょっと崇高な理念に聞こえますか?
ものを買いっぱなし、売りっぱなしにしない。そういうお店があることで、貧困をなくすことにつながるかもしれないし、ここ愛媛・伊予市が子育てしやすい街だと思ってもらえるかもしれない。それがSDGsになると思っています。
50円のミニカーを手に取って、喜んでくれる子もいる。「いい店やってるね」「また来たい」と言ってくれる子もいる。ありがたいし、ショップをやってよかったと思います。
コロナ禍でしんどくても、「みんな元気出せよ」と思ってお店にいます。「人のために働く」のは、楽しくて、ルンルンです。(照井琢見)
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あいざわ・あつき 神奈川県川崎市出身。2016~19年に伊予市地域おこし協力隊を務め、19年、伊予市米湊の交流施設「町家」に1号店を開いた。店名は伊予弁で「見てごらん」。火~土曜の午前11時~午後3時(土・祝日は4時)。2号店(つたや旅館駐車場奥)は火~土曜の午前9時~10時半。問い合わせはメール(picoponpicopon@yahoo.co.jp)。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル