リスク回避が生む負の連鎖 社会不安に陥りやすい国とは

吉田徹・北海道大学教授に聞く

 新型コロナウイルスの感染拡大で、経済にも深刻な影響が出てきた。各国が移動の制限を含めた「強い政策」を打ち出し、日本でも法改正で新型コロナで緊急事態宣言が出せるようになった。比較政治が専門の吉田徹・北海道大学教授は、「経済の収縮以上のリスクに直面している」と指摘する。新型コロナ対策の難しさは、リスク回避が生み出す「負の連鎖」にある、とも。どういうことなのか。吉田さんに聞いた。

 1975年生まれ。専門は比較政治。著書に「ポピュリズムを考える」、訳書にヤシャ・モンク「民主主義を救え!」など。

 ――新型コロナウイルス対策の改正特別措置法が14日に成立し、首相による「緊急事態宣言」が可能になりました。

 「法整備は必要だと思います。『宣言』が行われれば、都道府県知事によって外出の自粛や学校の休校などの要請・指示を行うことが可能になります。もちろん、すでに指摘されているように国民の私権制限に対する懸念はある。ですが、今までのように根拠がはっきりしない首相の決断ベースで物事が動くより実効性は高いでしょう」

 「特措法で期限が明確に区切られ、手続きの透明性が担保されていることに意味があります。また専門家の意見が反映されることが想定されています。先日の唐突な休校要請は、科学的・法的な根拠がなかったために混乱を生んだ側面がある。同じようなことが繰り返されれば、社会不安の広がりに歯止めが利かなくなります」

 ――「緊急事態」というと、他国の軍事的脅威やテロへの対策といった安全保障の文脈で適用されることが多い印象があります。今回はウイルスという公衆衛生の問題です。同じ問題でしょうか。

 「セキュリティー=国民の命と安全に関わる問題であるという意味では、テロも公衆衛生も同じ枠組みで考えることができます。そしていずれも一国だけでは対応できない点も同じです。人と病原菌は、国境を越えて動きますから、パンデミックの危機は一国の中だけでは対応できません。新型コロナ対策では世界保健機関(WHO)の声明に逐一注目が集まっていますが、公衆衛生に関する国際協力の起源は19世紀半ばにさかのぼります。国家間協調と公衆衛生は、歴史的に切り離せない関係にあります」

 「セキュリティーの問題につい…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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