JR東海の金子慎社長が令和9年中としていたリニア中央新幹線の品川-名古屋間の開業時期の再設定を表明したことで、同区間開業後の着工が見込まれる名古屋-大阪間の開業も遅れることが確実となった。開業時期が大幅にずれるような事態になれば、東京、名古屋との交流強化を通じて経済の浮揚を狙う関西経済界の思惑に狂いが生じ、地盤沈下が進むとの懸念が高まっている。(黒川信雄) リニアの大阪までの全線開業は当初、品川-名古屋間の開業から18年後の令和27年が予定されていた。しかし、大阪の地盤沈下を懸念する関西財界が国への働きかけを強め、財政投融資などの活用が決まったことで最大8年の前倒しが見込まれていた。 今回のリニア開業延期は、関西経済界のこれまでの努力に冷や水を浴びせる。リニア開発に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの宮下光宏主任研究員は「開業時期のずれ込みは、リニアで結ばれる東京、名古屋、大阪の3大都市圏において、特に大阪への影響が大きい」と警鐘を鳴らす。 宮下氏によれば、3大都市圏では大阪圏(大阪、京都、奈良、兵庫の2府2県)の人口減少ペースが最も早く、リニアの主要乗客と想定される生産年齢人口(15~64歳)も現在の1100万人から27年には780万人まで減少する。このため、「開業時期が遅れれば遅れるほど、大阪ではリニアの経済効果が薄れることになる」という。 リニア開業の遅れは都市開発にもマイナスの影響を与える。宮下氏は、リニアの停車駅と想定されるJR新大阪駅周辺や、JR大阪駅北側の開発などにおいて、「ビジネス客の流入低迷につながり、開発に携わる企業にとっては打撃だ」と指摘する。 関西経済連合会や大阪府市などで構成する「リニア中央新幹線早期全線開業実現協議会」は、7年の大阪・関西万博や大阪へのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致から時期を置かずにリニア開業を迎えることで、リニアの効果を「最大限引き出す」ことを狙っていた。開業の遅れは、この思惑にも疑問を突きつけることになる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment