ルッキズムの向こうへ① プラスサイズモデル・桃果愛さん
外見で人を判断するのは偏見や差別につながる「よくないこと」……のはずなのに、やせていたり、顔が整っていたりという特定の「美」が評価を受ける傾向はなくなりません。平均より大きなサイズを着こなす「プラスサイズモデル」として脚光を浴びる桃果愛さん(37)も、かつて太っているとみられることに苦しみ、自分を押し殺した時期がありました。「ルッキズム」を乗り越えるために見いだした「自分の価値」とは。
――モデルとしての活動だけでなく、昨年9月にはミラノ・ファッションウィークでショーをプロデュースしました。
パリ・ファッションウィークで出会った方からご縁をいただき、日本のブランドとともにミラノで出展しました。国内の老舗レッグウェアメーカーやランジェリーの製造販売会社と協力してチーム「MOMOKA TOKYO」として多様性を表現するショーを実現しました。
私がプロデュースするショーで、多様性を訴えない手はない。そう考え、日本と現地でプラスサイズモデルのオーディションを開催して、肌の色も国籍も体形もさまざまなモデルを起用しました。スレンダーなモデルもいれば、私より体の大きなモデルもいました。
「みんな美しいから、自信をもって歩いてほしい」
ショーが始まる前、モデルたちにそう伝えて送り出しました。私も「自分をみてほしい」という思いで歩きました。
太っているのは悪いこと?
――プラスサイズモデルへの視線をどう思いますか。
面と向かって言われたことはありませんが、ネットでは「デブを増産させるな」「不健康な人たちを集めてどうするんだ」など、尊厳を傷つけられるような発言を目にしてきました。
さまざまな体形の人がいるけれど、大きいことはことさら悪く言われます。健康面への懸念もよく言われますが、体形は生まれつきの性質でもあり、薬の副作用で太りやすくなる人もいます。私の事務所にも心を病んだり、病気の治療中だったりといった理由で太っている人もいます。一人ひとりの状況があるのに、「太っている=不健康」「だらけている」などとみられます。それぞれが輝いていいはずなのに、マイナスなイメージは悲しいです。
――桃果さんは外見にコンプレックスを感じていましたか。
陰で聞こえた声
大学3年の時、うつ病になって1年間休学したことがあります。
看護学科に在籍し、授業や看護実習が多忙だったストレスで、外に出られなくなりました。さらに、うつの薬の副作用で30キロ太ってしまいました。
休んだ後大学に戻れましたが、「あの人、太ってる」「体が大きいね」と影で言われているのが聞こえてきました。周りの人がみなそういう目でみていると思うようになり、人がいるところに行くのが嫌になりました。単位をとるために何とか大学には通いました。でも、好きだったピンクやカラフルな服はやめ、目立たないよう、少しでも引き締まってみえるよう、黒ばかり着ていました。
――それが変わったのでしょうか。
ふと、自分のクローゼットが…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル