接種の予約電話が殺到するほど大切な新型コロナウイルスワクチンが、余った場合はどうするか。他県では、事前公表なく自治体幹部らが接種し、その是非が議論となった。新潟県内の取り決めは?
ワクチンは専用のガラス瓶に入っており、解凍し、生理食塩水で薄めて使う。現在の配布分は、瓶1本に5人分の量。厚生労働省は、ワクチンが室温になって2時間以内に薄め、その後6時間以内に接種することと決めている。常温保存できず、時間を過ぎると廃棄される。このため、集団接種をする自治体は「注射器1本分もあまらせまい」と、予約数が原則として5の倍数となるように受け付けている。
それでも、体調不良などで予約取り消しも起こりうる。それに備え、事前に「キャンセル待ち枠」を設けているのが、高齢者接種の対象約24万人がいる新潟市だ。集団接種の予約受け付け時に、「キャンセル待ち枠」も割り当てる。枠の人数は、集団接種会場ごとに1日50人。予約取り消しが出た場合、電話などで「キャンセル待ち枠」の人に連絡する。
実際、集団接種初日の15日は事前手続きの行き違いなどで、予定より接種対象者が2人増えた。このため、「キャンセル待ち枠」を用い、ワクチンを余らせずに使い切ったという。
一方、22日から集団接種が始まる長岡市は、キャンセル分は接種会場にいる市職員の接種に充てる。会場の職員は市役所内の各部署からの応援。「今後も会場で市民と接するので予防が必要」と判断し、市長も交えた協議で決めたという。18日に集団接種を始める柏崎市も、「『医療従事者ら』に当たる」として接種会場の運営に携わる市職員分に回す。
4月以降に市内2カ所の中学校で生徒が感染した三条市は、市内小中学校の教職員分に充てる。対象は全28校で計270人。集団接種日の午後、ワクチンのキャンセル分が決まれば近くの学校から教職員に接種会場に来てもらう。滝沢亮市長が13日にツイッターに投稿すると、17日時点で1万5千回リツイートされるなど反響が広がった。
予約制ではなく、集団接種の日時と会場を指定している上越市。自己都合で会場にやって来ない人も少なくないと予測し、市は接種に来た人数にあわせてワクチンを解凍している。それでも接種初日だった10日以降、1日あたり数人分の余りが出ており、歯科医や薬剤師らに接種したという。
他県では、「接種会場の診療所の設置者。医療従事者に準ずる」として65歳未満の町長らを優先接種者とした例もあった。これには、「首長は実際に従事していないでしょう」(新潟市の担当者)と、取材に応じた県内自治体の担当者は一様に冷ややかだった。三条市の担当者は「自治体の事情によって異なるが、優先すべき人にワクチンを有効に使いたい」と話した。(里見稔、戸松康雄)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル