身寄りはない。けれど家族同然のペットがいる。そんな一人暮らしの高齢者が増えている。認知症などで介護が必要になったとき、ペットの世話を託せる人は誰もいない。放置もできない。介護とペット。高齢者支援の現場で介護関係者が直面する新たな課題だ。
交番からの連絡
「猫が何匹もいて、ご本人は認知症のようです。不衛生で気になるので連絡しました」
京都市岩倉地域包括支援センターに警察から電話があったのは、2019年2月のことだ。88歳の男性は妻と死別して一人暮らし。子どもはいない。「大事なものを盗まれた」と訴え、本人が警察官を呼んだ。介護保険などの公的サービスは全く使っていなかった。
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同センターのケアマネジャー・松本恵生さんは、すぐに男性の自宅を訪ねた。古い木造家屋の玄関に足を踏みいれると、糞尿(ふんにょう)の臭いが鼻をついた。数匹の猫が松本さんを見るやいなや、さっと姿を隠した。「野良猫を拾ったらどんどん増えて、いま7匹いる」と男性は説明した。実際はその倍の16匹の猫がいた。
男性は、猫のための部屋をつくって石油ストーブ4台で暖め、小皿を並べて缶詰のえさを与えていた。その部屋に布団を敷いて寝起きしていた。「猫ちゃんは元気の泉」「ホントの子どもぐらいに思ってます」と松本さんに繰り返した。
酒も飲まずタバコも吸わないが、猫のえさ代に毎月何万円も費やし、固定資産税や電話料金などの督促状が届いていた。さらに金融機関のカードを紛失してお金がおろせなくなっていて、手元の現金は底をついていた。
風呂場をみると、戸外に面した窓から吹き込んだ落ち葉がたまっていた。長い間入浴をせず、服も着替えていないことがうかがわれた。
松本さんは男性と相談し、カー…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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