新型コロナウイルスを巡る政府専門家会議のメンバーで、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長が28日、神奈川新聞社の取材に応じ、全国の学校に一律の休校を要請した政府の対応について「国民への負担が大きく、現時点では取るべきではないと思う」と話した。現時点では地域によって感染状況に差があることから、「地域ごとの対策が有効」との見解を示した。
専門家会議は24日に新型コロナウイルスに関する見解をまとめ、「これから1~2週間が急速な拡大か収束かの瀬戸際」と強調。多くの人が対面で会話する集会などへの参加をなるべく控えるよう呼び掛けた。ただ、今回の休校措置について、岡部所長は「専門家会議は提言しておらず、諮問もされていない。政治判断だ」と明らかにした。
岡部所長によると、2009年に新型インフルエンザが流行した際には、高校生の患者が国内で最初に見つかった神戸市が小中高校を一斉に休校にした。感染を抑え、流行を遅らせる一定の効果があったという。
今回の新型コロナウイルスも現時点では感染が相次ぐ地域とそうではない地域に差があり、岡部所長は「外から来た雑草の種が国内で増え始めている状況。地域ごとに数に差があり丁寧に摘んでいくべきだが、(政府の要請は)ブルドーザーで庭を掘るよう」と指摘。「全国一律の休校要請はそれなりの効果はあると思うが、国民に負担を強いる対策は、現時点ではバランスを欠くように思う」と疑問視した。
新型コロナウイルスの主な感染経路は、患者のせきやくしゃみなどのしぶきを吸い込む飛沫ひまつ感染、ウイルスがついた手で鼻や口の粘膜を触ることによる接触感染とされる。同じ空間にいるだけで多数の人に感染する空気感染について、岡部所長は「あったとしても極めてまれだろう」と話す。
今後に向けては、「時差通勤で混雑を避けたり、つり革につかまった後の手洗いを徹底したりすることが有効だ」などと例示しながら、市民1人1人が可能な対策を実践することの重要性を強調。「風邪や発熱の症状がある人は外出をしないなど、できることを一つ一つ積み重ねていくことが感染拡大の防止につながる」と述べた。
神奈川新聞社
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