一票の格差「合憲」の判決 原告は「裁判所も改革の必要性認めた」

野田佑介

 「一票の格差」が最大3・03倍だった7月の参院選は投票価値の平等を定めた憲法に反するとして、弁護士グループが鳥取・島根選挙区の選挙無効を求めた訴訟の判決が26日、広島高裁松江支部であった。松谷佳樹裁判長は「参院は具体的な改革案の提示には至らなかったが、格差是正を目指す姿勢を失ってはいない」として「合憲」と判断し、請求を棄却した。原告側は即日上告した。

 二つの弁護士グループが全国で起こした16件の訴訟のうち4件目の判決で、「合憲」「違憲状態」がそれぞれ2件となった。高裁判決は11月中に出そろい、最高裁が来年にも統一判断を示す見通し。

 判決は、3・03倍の格差を「不均衡の程度として小さいとはいえない」と指摘。一方、16年参院選から導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」の「合区」について、4県の知事らが解消を求めても制度を維持した点などを評価した。参院の選挙制度に関する協議会が議論を続けるとしていることなども踏まえ「著しい不平等状態にあったとはいえない」と結論づけた。(野田佑介)

原告側弁護士「ブロック制導入を」

 原告側の弁護士グループは肩を落とす一方、判決で前回参院選(2019年)より格差が拡大し、「是正の必要性が大きくなった」と述べたことから、「裁判所も選挙制度の抜本改革の必要性を認めた」として評価する姿勢も見せた。

 判決後、原告側の弁護士らは裁判所の前で「条件付合憲」と記された紙を掲げ、投票価値の不均衡が生じている現状は「国民主権ではなく国会議員主権になっている」と批判した。

 その後、松江市内で記者会見。久保利英明弁護士と升永英俊弁護士は、都道府県単位の選挙区割りを「ブロック制」にして格差を是正するよう訴えた。判決は「合区の解消を求める意見も根強い」と述べており、「裁判所も合区ではなくブロック制の導入を視野に入れていると受け止めた。『合憲』は残念だが、我々の主張に沿った判決で力強いメッセージをもらった」と話した。

 鳥取・島根両県合区選挙管理委員会は「我々の主張に理解をいただいたものと認識している。今後とも公正な選挙の管理執行に努めたい」との談話を出した。(野田佑介)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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