万引き家族、あなたが壊した 待ち構えるナショナリズム



 「家族を撮り続けている意識は、実はほとんどない」。テレビドキュメンタリーを手がけた後、劇映画デビューし、昨年のカンヌ国際映画祭で「万引き家族」が最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督(57)は、こう明言する。その真意とは。映画とは、公共とは、そして、次世代に伝えたいものとは。カトリーヌ・ドヌーブ、ジュリエット・ビノシュが母娘を演じた日仏合作の「真実」の公開を控え、困難を抱えた子どもへの無償の学習支援などを行うNPO法人代表理事の李炯植(リヒョンシギ)さん(28)と、文芸編集者で是枝ファンの岸優希さん(28)と語り合った。


家族は多様化 でも制度追いつかず、社会的抑圧も

これえだ・ひろかず 1962年、東京都生まれ。早稲田大卒。テレビドキュメンタリーの演出を手がけ、「しかし…」で90年度、ギャラクシー賞優秀賞。95年に「幻の光」で劇映画監督デビューし、2014年、「そして父になる」で芸術選奨文部科学大臣賞。18年度に朝日賞。最新作の「真実」は11日から「TOHOシネマズ 日比谷」ほかにて全国公開。

 李 是枝作品といえば、家族というイメージがあります。昨年のカンヌの最高賞は「万引き家族」。新作の「真実」でも母と娘の愛憎を描いています。貧困地区の出身で現在、貧困世代の子どもに生活や学習などの支援を行っている僕が、日本の家族について感じるのは、地縁、血縁がとても強くて、少しでも逸脱すると、生きづらくなるということです。近代的な「よい家族」に、制度や通念が引っ張られている。是枝さんはなぜ、家族に注力しているのですか。

 是枝 家族を撮り続けている意識は、実はほとんどないんです。今回の「真実」も、演じることで虚構が真実を超えるというのが主題で、家族のドラマを要素として加えたという感じ。ただ、実際問題として、家族の形が多様化しているのに、制度が追いついていないし、社会的な抑圧も強すぎる。日本社会の家族の定義は一義的で、定型からはみ出した在り方を認めない。

リ・ヒョンシギ 1990年、兵庫県生まれ。東京大学卒。2014年にNPO法人「Learning for All」を設立し、代表理事に。子どもへの支援は、延べ7千人超。「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」理事。

 李 そこで親密圏をどう、つくっていくか。僕らのテーマは、血縁がなくても安心、安全に暮らせる空間をつくることなのです。

 岸 「真実」の舞台であるフランスの家族の在り方は多様ですね。シングルマザーが当たり前だし、様々な福祉も受けやすい。

 是枝 日本はでもなぁ。自民党…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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