広島への原爆投下後に「黒い雨」を浴びたと訴えた84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、菅義偉首相が26日、上告を見送る考えを示した。政府内で広がる「上告不可避」の見方から一転しての首相判断。背景に何があったのか。
首相による表明は、唐突に行われた。
26日午後4時ごろ、首相官邸のエントランスホールで待機していた記者団に、約15分後に首相が取材に応じると連絡が入った。その直前から首相は法相や厚生労働相、官房長官と協議に臨んでいた。
協議を終えて記者団の前に立った首相は「上告についてはしないこととした」と明言。「多くの方が高齢者、病気をお持ちの方もいる。速やかに救済させていただくべきだという考え方に至った」と理由を説明した。首相はその後、広島県の湯崎英彦知事らと面会し、「国、県、市が連携をして、救済に向けて取り組んでいきたい」と伝えた。
自らの「政治決断」を強くにじませた首相だが、この間、対応に悩み続けていた。14日の高裁判決から間もなく、広島が地元の与党議員が首相に電話し、「政治的救済があってもいいのでは」と求めた。しかし反応は薄く、この議員は「厳しいと感じた」という。
官邸幹部、朝の段階でも「上告」が基本路線とみていたが…
政府内では「上告しかない」…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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