上方歌舞伎の女形、上村吉弥が、素踊りの会「みよしや一門会」を9月20日、大阪市中央区の大槻能楽堂で開く。同じ「美吉屋」の屋号を持つ上村吉太朗、上村折乃助との舞台だ。
吉弥にとって、吉太朗は師匠である片岡我當の部屋子。折乃助は弟子にあたる。3月以降、コロナ禍で舞台は中止。それでも2人が踊りの稽古に励む姿を見て「役者の一番の活力は、お客様に見て頂く場があること」と企画したという。
歌舞伎舞踊とは異なり、衣装やかつらをつけない素踊りは「踊り手から、にじみ出てくるものがないと伝えられない部分が多いですから、大切だと感じていました。能楽堂にはぴったりだと思います」と吉弥。
吉太朗の「松の三番叟(さんばそう)」はコロナ禍の収束を祈り、選んだ。折乃助は長唄舞踊の大曲「鏡獅子」から前半部分の小姓弥生を踊る。約1年前から稽古しており「いずれ踊れたら……と話はしていましたが、こんな時だからこその『挑戦』という感じです」。
続く「道行(みちゆき)初音旅(はつねのたび)」は、静御前を吉弥、佐藤忠信実ハ源九郎狐を吉太朗が勤める。この道行は、歌舞伎では清元と義太夫の掛け合いで上演されることが多い。今回は、曲や歌詞も異なる義太夫節を用いる。「忠信は憧れだった」という吉太朗は「大好きな歌舞伎に触れられない時間が長く、つらかった。本当に力を入れてやりたい」と話す。
歌舞伎の舞台が休演中、松本幸四郎が企画した配信向け作品「図夢(ずうむ)歌舞伎『忠臣蔵』」の「六段目」に出演した吉弥。「カメラ割りなどに長い時間がかかり、大変でした。でも、距離を取りつつ、近くにいるように見せる撮影の工夫もあって。こういうやり方もあるのだと、大変勉強になりましたし、これからの新しい歌舞伎の見せ方だと思いました」と振り返る。
感染者が再び増加し、不安な状況が続く。吉弥は「気をつけて来て下さるお客様を、万全の準備でお迎えしたいと思います」。
午後1時と5時の2回公演。5千円。みよしや一門会(080・2225・7834)。(増田愛子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル