東京・上野の西郷隆盛像に、たくさんの紙が貼られている。
関東大震災の様子を撮影した写真で、朝日新聞に残っていた。貼り紙のほか、像の周りには複数の木の板も立てられ、ひときわ高い板には「互立運輸」という文字が確認できる。いわば伝言板のような状況だ。
100年前、壊滅状態の東京で、電話も満足につながらない中、被災した人々はどうやって知人と連絡を取ったり、必要な情報を入手したりしたのだろう。
「関東大震災 消防・医療・ボランティアから検証する」の著書もある東京大大学院の鈴木淳教授(日本近代史)に、震災直後の状況について聞いた。
多くの紙が貼られた西郷像の写真を見て、鈴木教授は「個人の安否確認ではなく、主に商店や事業所などが立ち退き先を記したものだろう」と分析した。例えば、東京府庁(当時)の塀にも、不特定多数の人に向けた公共性の高い情報の貼り紙があったという。一方、個人が家族や親戚に安否を知らせる場合は、自宅の跡地に案内を残すのが一般的だった。
朝日新聞に残る写真には、震…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル