新型コロナウイルスの感染拡大が、不妊治療をしている人たちにも影響を及ぼしている。高齢になるほど妊娠、出産が難しくなるが、コロナの感染リスクを理由に、治療の中断を勧めるクリニックもある。治療中の女性たちから「先延ばしにはできないのに」との訴えが上がる。
「不出来具合、突きつけられる」検査の苦しみ
関東地方の女性Eさん(26)が不妊治療外来の通院を始めたのは2年前。妊娠しやすい日の指導を受ける「タイミング療法」と人工授精を合わせて10回行い、いずれも陰性だった。その後体外受精で胚を子宮に移植したが、2回とも着床しなかった。
排卵日の10日ほど前からほぼ毎日、卵胞を育てるためのホルモン注射を打つ。治療の都合で急な休みを取るようになると、同僚たちからの視線を冷たく感じるようになり、耐えきれず退職した。
「検査結果を聞くたびに、自分の不出来具合を突きつけられたみたいでした。心身の苦痛をいくら我慢しても、成果を得られない。その虚しさをずっと抱えてきました」
今年1月から慢性子宮内膜炎の治療を始めた。4月下旬の再検査で症状が改善していたら、凍結胚の移植に移る予定だ。
学会声明「治療延期を選択肢に」
だが新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本生殖医学会は4月1日、治療の延期を選択肢として患者に示すことを推奨する声明を公表した。
「妊婦の感染リスクが高いとはいえない」とする一方、「妊娠が成立した後のコロナ感染の対応に苦慮することが予想される」との見解を示した。声明は治療の延期を強制する内容ではなく、患者の希望を考慮する病院やクリニックもある。ただ、実際には「クリニック側から治療の中止を告げられた」というケースも出ている。
学会の声明を受け、Eさんが通うクリニックも「当面の間、全ての不妊治療は中断されることをお勧めしています」との方針をウェブサイトで公開した。
「コロナが収まる見通しは立たずいつまで待てばいいかも分からない。移植できるタイミングでしなければ、(慢性子宮内膜炎が)再発するかもしれない。慣れ親しんだ地元のクリニックから変えたくはないのに・・・」
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース