全ての子どもが一緒に学ぶ教育に取り組む大阪市立大空小学校初代校長の木村泰子さんを招いたシンポジウム「インクルーシブな楽校(がっこう)づくりのために」が3月、神奈川県葉山町で開かれた。インクルーシブ(包摂的)教育に力を入れる葉山町が、町全体で一緒に考えようと企画し、教職員や地域住民ら約200人が熱心に耳を傾けた。
大空小は学校と地域が協力しながら、不登校や発達障害など特別な支援が必要な子も、そうでない子も、みんなが同じ教室で学ぶことで知られる。木村さんは初代校長を2006年から9年間務め、同校に密着したドキュメンタリー映画「みんなの学校」(14年)は大きな話題を呼んだ。
暴れる子には「何困ってるん」
シンポジウムの前に上映されたこの映画では、教室を出ていく子を教員が追いかける場面や、友達に暴力をふるってしまう男児の姿も出てくる。児童にきつい言葉を投げかけた教員を木村さんが厳しく戒める姿を含め、ありのままが記録されている。
「自分は大空小で大きく変えてもらった」と木村さん。いじめられたり、不登校のレッテルを貼られたりして困っている子どもたちに接して、「子どもを変えることではなく、大人が変わることがスタートだった。教師の仕事は子どもを教えるプロではなく、学びのプロになること」と振り返った。意識の変化で、暴れてしまう子どもへの声かけは、「暴れるな」「迷惑やで」ではなく、「大丈夫か」「何困ってるん」「私にできることあるか」に変わっていったという。
「地域住民は変わらない」
会場から「いまの大空小はどうなっていますか?」と質問が寄せられたが、木村さんは「全ての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことだけ引き継いだ後は、大空小に行っていないという。理由は「過去の人間が、奮闘している今の場所に行っても何の役にも立たない。1秒先の未来は変えられるが、過去を引きずったら何もいいことはない」から。一方で、教職員や児童が入れ替わっても地域住民は変わらないことに触れ、「土と同じで耕し続けられる」。「葉山で生きている全ての子どもの学びを保障する学校をつくること。全ての人が、葉山の学校をつくる当事者になることが大事」と強調した。
約1時間半のシンポジウムの様子は町のホームページの「催し・行事」からアクセスでき、4月30日まで公開されている(https://www.town.hayama.lg.jp/event/14824.html)。
町長「自分も過去に…」
この日、山梨崇仁町長(47)が、町の教員や教育長らと一緒にパネリストとして登壇した。町民らを前に「自分も過去に学校に行けなかった時期があった」と明かし、「(木村)泰子先生のような人があの時いたらと、すごく思いました」と語った。日を改めて思いを聴いた。
――不登校だったのはいつごろですか。
都内の小学校に通っていた5…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル