国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の企画展「表現の不自由展・その後」の中止をめぐる愛知県の検証委員会(座長=山梨俊夫・国立国際美術館長)は25日、中間報告をまとめた。企画展の展示方法に多くの欠陥があったと指摘した上で、津田氏の責任に言及し、リスクを回避する仕組みが芸術祭実行委や愛知県庁に用意されていなかったと批判している。
報告によると、企画展が始まった8月1日からの1カ月間で電話やメールなどテロ予告や脅迫を含む計1万379件の抗議があった。「展示室内はおおむね冷静だった」が、「展示を見ていない人がSNS上の断片画像を見て」、県庁や県立学校などに「組織的かつ大量の電凸(電話による攻撃)攻撃に及んだ」と指摘。抗議を受けた中止は、「危機管理上の正当な理由に基づく」もので、「やむなしと考えられる」と認定した。
その上で、報告では、展示室が閉じられたまま芸術祭が閉会すると、「国内の各地で開催される芸術祭」や「国公立美術館への海外作家らの出展拒否につながりかねない」と判断した。電凸や脅迫によって「中止に追い込むことができるという悪(あ)しき前例を作ることになり、好ましくない」とし、再開にむけた条件を検討している。
今回のトリエンナーレは「政治・ジャーナリズムとアートの融合という先端領域に挑戦」したと津田氏を評価した。一方、不自由展は芸術祭のテーマ「情の時代」に沿い「不適切であったとはいえない」が、「政治的テーマだから『県立や市立の施設を会場としたい』という芸術監督(津田氏)や不自由展実行委員会のこだわりは、公立施設が想定する使用目的から逸脱している」と批判した。広く県民が楽しめる祭典という「トリエンナーレの性格に照らせば、疑義がある」とした。
報告は、不自由展の展示方法を問題視した。慰安婦を表現した少女像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品などに抗議が集中したことについて、「作者の制作意図等に照らすと展示すること自体に問題はない作品だ」とするが、「制作の背景や内容の説明不足」を指摘。「政治性を認めた上で偏りのない説明」が必要で、「すなわちキュレーション(企画の実施手法)に失敗」したと批判した。
さらに、こうした展示に至った責任について、「誤解を招く展示が混乱と被害をもたらした最大の原因は、無理があり、混乱が生じることを予見しながら展示を強行した芸術監督の行為にある」と断じ、津田氏を厳しく批判。専門のキュレーター(企画展示者)チームの不参加や関係者間のチームワークの不備を指摘した。
一方で、報告は「芸術監督には…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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