「世界初?」と銘打ったお笑いと音楽のイベントが28日、東京・西麻布で開かれる。大げさにも思えるキャッチフレーズの理由は、会場が寺だからだ。なぜ厳かなイメージのある寺で? 主催するお笑い芸人に聞くと、そこには深い思いがあった。
題して「妙善寺コメディフェス」。東京都港区西麻布3丁目の日蓮宗の寺、妙善寺の「本堂ステージ」で、お笑いライブがある。また音楽イベントが「書院ステージ」で開かれる。午後1時から9時までぶっ通しで、「一日中笑い放題」とうたう。
お笑いライブは、約30組が出演。テレビ出演の経験がある人もいるが、東京近郊で活動する20~30代の若手が中心だ。音楽イベントは、ミュージシャン5組がDJをしたり、アコーディオンを演奏したりする。即興演劇のパフォーマンスもある。いなりずしやコーヒーなどの店も出店する。
主催者の芸人、お笑いコンビ「オシエルズ」の矢島ノブ雄さん(32)は、実は2015年から隔月で同寺の本堂でライブを開催している。
寺を、生きている人が縁を結び、豊かな暮らしをできる場所にしたい――。そんな思いで、寺で映画祭などを開いてきた住職の的場徳雅さん(38)の思いに感銘を受けたからだという。
本堂はふだん、読経や礼拝の際に鳴らすおりんや太鼓などの仏具が置かれている「厳かな場所」だ。「利他」の空気が流れる場所でのライブは、活動16年目の矢島さんが初心を思い出す場所になっているという。
「慣れてしまったり、余裕がなくなったりして、好きで好きで始めたときの気持ちを忘れがち。でもここでは、お笑いで人を元気にしたい、幸せにしたいという気持ちになれる。建物の持つパワーを感じる」
劇場ではなく寺を会場とすることで、普段お笑いに接したことのない人や、音楽が好きな人にも興味を持ってもらおうと、今回のフェスを企画した。
「粒ぞろいのメンバーを集めた。お客さんの笑い方や呼吸を感じ取って、対話しながら全力でやっている。お客さんには臨場感を楽しんでもらえたら」
一方で、芸人自身にも、自分のように寺での出演を楽しんで初心を取り戻してほしいという、祈るような思いもある。
矢島さんによると、若手芸人は、日中はオーディション、夜は数千円の出演料を払ってライブ、夜中は週5、6日アルバイトという生活の人が少なくない。体調を崩したり、心をすり減らしたりする人が多いという。知り合いでもうつ病になったり、突然姿を消したりした人が何人もいたからだ。
「それでもお笑いが好きで舞台に立っている。そんな思いも伝われば」
チケットは3千円(会場で軽食などに使える1千円券を含む)。購入はhttps://myozenji-comedyfes.peatix.com/
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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