中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、中国の旅行会社を統括する中国旅行社協会は25日、中国政府の要求に基づき、国外旅行を含む全ての団体ツアー旅行を27日から一時禁止とすることを決めた。中国中央テレビなどが伝えた。
ツアーのほか、航空券とホテルをセットにした旅行商品の取り扱いも、当面取りやめる。
中国では春節の大型連休が始まり、中国メディアによると連日約190万人の出入国が見込まれていた。ツアー禁止の決断は、アジアや欧米に新型肺炎の感染者が広がる中で国際的な感染拡大をなんとか食い止めようとする政府の危機感の表れだ。
中国人観光客は、日本政府が目指す観光立国戦略を支える柱。観光庁の2018年の調査では、今回影響を受ける旅行商品で訪日する中国人は全体の39・6%を占める。
春節に合わせた訪日客の繁忙期だけに、今回の措置は日本の観光業界などに大きな打撃を与えそうだ。
中国での感染者が1287人に達するなか、北京市が市境を越える長距離バスの運行中止を決めるなど、住民の移動規制は感染が始まった武漢から湖北省全体に広がり、首都にも及び始めている。中国政府や共産党機関紙人民日報によると、死者は新たに16人増え、全国で42人に達した。
習近平(シーチンピン)国家主席は同日、春節にもかかわらず、共産党最高指導部の政治局常務委員会を招集し対応を協議。その後にツアー禁止などが相次ぎ発表された。
一方、武漢市は25日、許可を得た輸送車や公用車をのぞき、26日から市街地での自動車の運転を禁止すると発表。武漢市を含む湖北省内17の主要な地方政府すべてが、25日までに鉄道やバスの運行停止、高速道路や一般道の封鎖などの規制をとった。イタリアとほぼ同じ人口約6千万人を抱え、日本国土の約半分の面積をほこる省全体で自由な移動が制約された形だ。
SNS上には、省境などで撮影されたとみられる画像が多数投稿され、道路が土砂や車両で封鎖されている。
中国国外の感染も止まる兆しがない。
日本の厚生労働省は25日、旅行で訪日した武漢市在住の30代女性の感染を確認したと発表した。日本で感染が確認されるのは3人目。女性は家族ら3人とともに武漢市から18日に来日し、21日から発熱とせきが出たという。23日に東京都内の医療機関を受診したところ軽い肺炎の症状がみられたため、東京都が検査し、感染が確認された。
25日までに新たにフランスで3人、豪州で4人、マレーシアで3人の感染が確認され、感染が確認された国と地域は中国を含め14に上った。
一方、世界保健機関(WHO)は24日、ベトナムで感染が確認された中国人男性2人について、ヒトからヒトへの感染事例とみられると報告書で明らかにした。ベトナム政府によると、2人は親子で、父親が武漢市からベトナムに住む息子のもとを訪れていた。
WHOは23日、中国国外でのヒトからヒトへの感染が確認されていないなどとして国際的な緊急事態の宣言を見送ったが、その判断に影響する可能性もある。(高田正幸=北京、土肥修一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment