まもなく中学入試本番。毎年のように出題されるのが、前年に起きた出来事を踏まえた時事問題です。どんなニュースに注目すればいいか、どう対策するのか。各科目について塾講師に聞きました。周囲の大人の協力が決め手になるそうです。(高浜行人)
社会 コロナ関連、ジェンダー… 「大人がニュースの話を」
毎年12月に時事問題の講座を開く学習塾「SS―1」の馬屋原吉博副代表は、「新型コロナウイルス関連は外せない」と話す。
例えば、世界各国のコロナワクチン接種率の推移を表すグラフを見て、世界の格差をどう考えるか説明する問題。「社会科では前提として『アメリカの新大統領の名前は』など知識のみの問題は減っている。何を考えてニュースを見ているか問い、問題をどう解決するかを答えさせる設問が増えている」と話す。
コロナについては、昨年以来、テレワークによって電子機器の需要が高まり、世界的に半導体不足に陥ったこと、それによって自動車の生産が打撃を受けたことなど、影響の広がりもおさえる必要があるという。「半導体や自動車など、多くの産業と関わるトピックは注目。知識を結びつける力が問われる」
例年頻出のテーマが、社会の格差や不公正について。「僕だったら、ジェンダーの問題をつくります」と馬屋原さん。夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした今年6月の最高裁判断を巡って、姓を変えるのは女性の方が多いという現状にはどんな問題があるか。10月の衆院選にからみ、国会議員の女性比率の低さやその弊害は何か。説明できるようにしておくといいという。
気候変動も無視できないトピックだ。今年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも話題になった二酸化炭素の排出量をめぐる先進国と途上国の対立や背景。また火力や原子力、水力といった発電方法や、再生可能エネルギーのメリットやデメリットについてはそれぞれ知っておく必要がある。ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)といったエコカーの特徴もおさえておいた方がいいという。
世界遺産も出そうだ。特に「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、青森県の三内丸山遺跡を場所も含めて把握するのはもちろん、北海道も含む全体の広がりもみておくべきだという。「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、国内5件目となる自然遺産であることをおさえる。
国際関係では世界の難民問題が重要。クーデターのあったミャンマーや、事故のあったスエズ運河など、ニュースがあった場所については地図上の位置を確認しておくとよいという。キャッシュレス決済やセルフレジなど、生活に関連する身近な話題も大事だ。
時事問題の関連知識は問題文中で説明されることが多く、出来事の知識自体はそう重要ではないという。ただ、背景や他の出来事との関連など前提知識は必要で、考えたことがあるかどうかで差が付きやすい。
対策について馬屋原さんは「世の中に関心を持てとよくいわれるが、中学受験生は忙しい。周囲の大人がコミュニケーションをとってあげてほしい。ご飯を食べながらでもいいので、テレビや新聞のニュースについて気付いたことや感じたことを話し合うとよい」と話す。時事問題集に取り組む場合は、書いてあることをすきま時間に読み、基本用語を20~30程度確認するような使い方で十分だという。
2022年社会の時事問題例(馬屋原吉博さん作成)
問題①
2021年7月、青森県の(ア:三内丸山、イ:吉野ケ里)遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が新たにユネスコの世界(ア:自然、イ:文化)遺産に、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界(ア:自然、イ:文化)遺産に、それぞれ登録されました。
問題②
2021年9月、事実上、内閣総理大臣がトップを務める(ア:ICT、イ:デジタル)庁が新たに組織されました。(ア:ワクチンパスポート、イ:マイナンバーカード)を普及させ、様々な手続きがオンラインで行えるようになる状態を目指します。
問題③
2021年10月の衆議院議員総選挙の投票率は約(ア:56%、イ:49%)で、戦後、3番目に低い投票率となりました。また、新たに選ばれた衆議院議員のうち、女性が占める割合は(ア:22.9%、イ:9.7%)となり、前回をさらに下回る結果となりました。
問題④
2019年4月から「特定技能」を持つ外国人が一定期間日本で働けるようになりました。対象となる業種は(ア:医療、イ:介護)などで、この結果、現在、日本で働く外国人労働者の国籍は(ア:中国、イ:ベトナム)がもっとも多くなっています。
問題⑤
新型コロナウイルスに関連して、2021年10月31日に「明白なワクチン格差、アフリカは1割未満」という見出しの記事(朝日新聞デジタル)が報道されました。この見出しの意味するところを、「先進国」「発展途上国」ということばを使って分かりやすく説明しなさい。
<解答>
①ア、イ、ア
②イ、イ
③ア、イ(49%は前回の参院選の投票率、22.9%は現在の参院の女性比率)
④イ、イ
⑤例:先進国に比べ、発展途上国ではワクチンの供給が遅れているということ。
記事の後半では、理科の時事問題に出そうなトピックについて、進学塾の講師が語っています。理社だけでなく、算数や国語にもその年ならではの問題があるそうです。理科と算数の予想問題もあります。
理科 断トツは地学、災害関連の問題が頻出
「断トツに出やすいのが地学…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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