首都圏の大手塾の教室に勤める40代の男性講師は、中学受験を目指す子の保護者の一部に、ある「変化」を感じているという。
ある日、こんなことがあった。
「子どもに中学受験をさせたい」。小5になる子どもがいる母親から相談を受けた。
中学受験では多くの子が小4から本格的な学習を始める。男性は20年ほどの指導経験があるが、小5になるまで塾などで勉強してこなかった子の場合、十分な準備ができないまま本番を迎えることが多いのだという。
男性は、その子どもの学力を把握しようと算数を少し教えてみた。すると、基礎固めが必要な段階とわかった。まずは実力に見合った簡単な問題から解いてもらうことにした。
母親から「こんな易しいものでは意味がない」と言われたため、正直に伝えることにした。「無理をするよりも、今から高校受験に切り替えませんか」
母親は譲らなかった。
結局、子どもは入塾することになったが、男性は「結果はどうなるかわからない」と伝えた。
子どもの将来に向けて何がベストかよりも、中学受験をさせることそのものにこだわっているのでは。男性の目にはそう映った。
このように受験勉強を遅れて開始するケースは2~3年前から目立ち始め、年々増えているという。
なぜなのか。一つ、思い当たることがある。
首都圏での中学受験は、新たな局面に入っている。経験豊富なこの講師はそう感じています。記事の後半では、講師が感じる中学受験のメリットのほか、「負」の側面についても語ってもらいます。
郊外にも波及する中学受験熱
男性の勤務する教室は郊外に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル