首都圏で高まる中学受験熱。元小学校教員で教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは、夏期講習が始まり受験勉強が本格化するこれからの季節、親が特に避けなければならないことがあるといいます。親が口にしがちな「暴言」の例や、その危険性について、親野さんに聞きました。親子関係の専門家がみる、中学受験に潜むリスクとは。
――中学受験に向け、親子関係で注意すべきことは。
「何度言ったらわかるんだ」とか、「全然だめ」とか、子どもを否定するような言葉を言ってしまうおそれはないか、自問してみてください。こうした言葉はひとたび口にすれば子どもの自己肯定感を損ない、親への不信感につながります。親子関係は人間関係の第一歩。そこでつまずくと人間不信につながりかねません。
――「自分に限ってあり得ない」と思う保護者も少なくないのでは。
中学受験は塾代などの膨大な費用と、宿題の採点などの手間が必要で、親に様々な負担がかかります。
そんななかで、本当に感情的にならずにいられるか。よくあるのは例えばこんなケースです。親子で私立校の説明会に行って、子が自ら「ここに行きたいから勉強する」と決意表明する。でも、しばらくすると意欲がなくなってゲームばかり。問題を解く際に同じ間違いを何度もする。そんな様子を見て冷静でいられるでしょうか。リアルに想像してみてください。
――実例はありますか。
評論家として教育に携わるなかで、保護者から様々な相談を受けてきました。
ある家庭で、塾に通わせて家庭教師もつけたのに、小6の夏を過ぎても成績が上がらなかった子がいました。危機感を覚えた父が何度もしかりつけましたが、子の意欲はあがらず、父は怒りにまかせて殴ってしまいました。受験には落ち、父との関係は修復不可能になったそうです。
極端な例かもしれませんが、同じ状況になるかもしれない。子どもに中学受験をさせる保護者の皆さんに、考慮してもらいたいですね。
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おやの・ちから 1958年生まれ。本名、杉山桂一。公立小の教員時代からペンネームで活動し、退職後、教育評論家に。著書に「子育て365日 親の不安がスーッと消える言葉集」(ダイヤモンド社)など。(高浜行人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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