中学受験をするか、しないか。悩む人も多いと思いますが、実際の進学後、子どもにどんな影響があるのでしょうか。中学受験の厳密な「効果」について、教育社会学者の森いづみさんが、追跡調査データに基づいて分析しました。
「不安」の正体は何?
――なぜ、中学受験の効果を研究しようと思ったのですか。
国立・私立中学や公立中高一貫校への進学率は近年、緩やかに上がっています。周囲でも中学受験への関心を耳にすることが多いです。
民間調査の分析結果からは、公立中学への不安感も、中学受験を選ぶ要因になっている様子もうかがえます。
このような「不安」の正体は一体何なのか。どの程度実態に基づいていて、どの程度がうわさレベルのものであるのか、中学受験をして国立・私立・公立中高一貫へ進学すると実際に何が変わるのか、データで検証したいと思いました。
見かけ上ではなく実際の効果は
――中学受験をするかどうかの選択には、親の個人的な経験や周囲の親子の影響も大きいように感じます。
どうしても教育分野は、客観的なデータよりも主観的な経験によって語られてしまう部分が多くあります。
また、これまでの学術研究では中学受験をする子の親や家庭などの「背景」は明らかにされてきましたが、実際に進学することが本人の学びや成長に及ぼす「影響」についても、学術的に明らかにする必要があると考えました。
先行研究が示す通り、私立中に進学する生徒は、もともと学力や親の学歴、収入も高い傾向にあります。
私立中などへの進学が生徒の知識やスキルを高めているとも言われる一方で、元々そうした生徒が集まりがちなために、見かけ上効果が出ている可能性もあるのです。
実際の効果を測るために、それぞれの生徒個人が進学によってどう変わったのかを分析しました。
――結果としてわかったプラスの効果とマイナスの効果をそれぞれ教えてください。
いま論文にまとめている最新…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル