中身は飲むまで分からない 山形の酒、地震乗り越え復活

 今年6月の山形県沖地震で被災し、販売できなくなった日本酒を復活させようというユニークな事業が始まった。保管中の混乱で、種類が分からなくなった日本酒を新ブランド「もっけだの鶴岡」として商品化。大吟醸なのか純米酒なのか、飲んでみるまで分からない仕掛けだ。22日から同県内の13の温泉旅館や酒販店、神奈川県鎌倉市の山形そば店「ふくや」などで順次販売される予定。

 6月の地震で山形県鶴岡市は震度6弱を観測し、市内の酒蔵は大きな被害を受けた。鶴岡市大山地区の渡會(わたらい)本店や羽根田酒造などでは貯蔵庫に酒瓶が散乱した。一部はラベルを貼る前の段階で、銘柄を表示することが出来なくなってしまった。渡會本店の阿部恵(けい)さんは「いいお酒が出荷できなくなってしまいました」と話す。

 被災した酒蔵を応援しようと、山形県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部が日本酒の買い取りを企画。広告企画などを手がける面白法人カヤック(鎌倉市)の香田遼平さん(29)や博報堂が協力して実現させた。

 「もっけだの鶴岡」として生まれ変わったのは、渡會本店の純米大吟醸「出羽ノ雪」や特別純米「和田来」、羽根田酒造の純米吟醸「羽前白梅ちろり」など5種類の銘柄。「もっけだの」は庄内地方の方言で「すみません、ありがとう」の意で、消費者への気持ちを表している。

 香田さんは「どの銘柄かは分からないが、地震を乗り越えた縁起物」と語る。

 鎌倉市で「ふくや」を営むヤマカワマサヨシさんは「鶴岡のお酒はすっきりしつつも、うまみがあって全部おいしい。その上、復興支援なら中身は問いません」と二つ返事で仕入れることを決めた。問い合わせは渡會本店(0235・33・3262)まで。(鬼室黎)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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