2017年に愛知県一宮市立中学3年の男子生徒(当時14)が自殺し、担任教諭らの不適切な指導や学校の不十分な対応が原因として、両親が一宮市に損害賠償を求めた訴訟で12日、名古屋地裁一宮支部(坪井宣幸裁判長)が、請求額の9割を市が支払う内容の和解案を示した。原告代理人が「市側の責任を認めるもの」と明らかにした。
訴状によると、男子生徒は17年2月、「担任に人生全てを壊された」と携帯ゲーム機に書き残し、大阪市でビルから飛び降りた。
原告代理人は請求額を明らかにしていないが、10月に陳述した最終準備書面の主張がほぼ認められる和解案が原告、被告の双方に示されたという。和解案は、関係が悪化した担任教諭にカッターナイフを向けるなど、男子生徒が精神的に不安定な状態にある中、受験直前に進路指導の面談で別の教諭が「(志望校に)全部落ちたらどうする」と発言したことを重視。「こうした発言は無用に強い精神的な負荷をかけ、生徒が衝動的に自死をする予見はできた」と安全配慮義務違反を指摘した。「生徒の心情や不安を理解し、寄り添う姿勢が感じられない」とも言及しているという。
被告側は、自殺と教諭らの指導などに因果関係はなく、自殺の予見も不可能と請求棄却を求めていた。
原告代理人の鈴木泉弁護士は「審理が尽くされた結果の和解案だ。しっかりと受け止めたい」。男子生徒の母親は「本人は帰って来ず寂しいままだが、裁判所に訴えが認められたことはよかった」と取材に話した。
一宮市は「司法の判断を真摯(しんし)に受け止め和解案の内容を確認し、今後の方針を協議する」とのコメントを出した。(荻野好弘)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル