秋雨前線が活発化した影響で、九州北部は28日、記録的な大雨になった。気象庁は福岡、佐賀、長崎の3県に一時「大雨特別警報」を発表。佐賀県では1時間に100ミリ以上の猛烈な雨が降り、佐賀県武雄市と福岡県八女市で男性2人が死亡、佐賀市で女性1人が意識不明となっている。
29日も九州北部を中心に大雨の恐れがあり、気象庁は特別警報を再び発表する可能性もあるとして注意を呼びかけている。29日午後6時までの24時間予想雨量は九州北部、東海で150ミリ、中国、北陸で120ミリ、近畿、関東甲信で100ミリ。その後の24時間も九州北部、東海、北陸では50~100ミリの予想。
気象庁によると、対馬海峡付近に秋雨前線が停滞し、暖かく湿った空気が流れ込んだ。この影響で九州北部に帯状に並んで雨を降らせ続ける「線状降水帯」が発生し、大雨をもたらした。
28日未明に佐賀市では1時間に110ミリ、佐賀県白石町で109・3ミリの猛烈な雨が降った。朝までの24時間でも長崎県平戸市で434ミリ、佐賀市で390ミリとなり、いずれも平年の8月1カ月の約2倍の雨が降った。気象庁は午前5時50分に特別警報を発表し、午後2時55分に解除した。
佐賀県大町町(おおまちちょう)の順天堂病院の周囲が浸水し孤立状態になった。午後10時半現在、入院患者ら201人が建物内で避難している。
床上・床下浸水は福岡県で少なくとも107件、長崎県で78件発生。佐賀県は「県内各地で多数」として把握しきれていないという。佐賀県の山口祥義知事は自衛隊に災害派遣を要請した。総務省消防庁によると28日午後3時時点で3県の13市4町1村の計36万5164世帯87万619人に避難指示が出ている。
2018年の西日本豪雨でも
九州北部などの記録的な大雨には「線状降水帯」が関わっている。
線状降水帯は、長さ50~300キロ、幅20~50キロの帯状に延びる強い雨域。連なった積乱雲が帯状に並び、長時間同じ場所にとどまって豪雨をもたらす。昨年7月の西日本豪雨や2017年の九州北部豪雨の際にも発生した。ただ詳しい発生メカニズムは分かっておらず、気象庁は「予測は難しい」とする。
同庁によると、28日は日本の南にある太平洋高気圧が張り出したことで、秋雨前線が南下できずに対馬海峡付近に停滞。そこに南から湿った空気が流れ込んだことで積乱雲が次々と発生した。同日未明から明け方にかけて線状降水帯が長崎、佐賀、福岡の3県を覆ったという。
九州北部では29日も、線状降水帯が発生して大雨になる恐れがある。大雨特別警報が再び発表される可能性もあり、同庁は引き続き、早めの避難や安全確保を呼びかけている。(金山隆之介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル