九州豪雨から18日で2週間が経過し、住宅に被害を受けた人の中には避難生活が長期化している人もいる。土砂崩れの被害が出た熊本県津奈木町福浦では15日、山肌に新たな亀裂が見つかり、付近の住人が避難を始めた。地域のかんきつ農家は、土砂が流れ込んだ農地の復旧に追われる中、避難所から園地に通う生活を強いられ、負担が増している。(三宅映未)
園地と往復
避難を余儀なくされ、同町の平国コミュニティセンターで生活する住民らは、日中は仕事などで外に出て、夜に避難所に戻り、寝泊まりする毎日を送る。 同町で中晩かん「デコポン」を作る農家の伊藤辿さん(85)も、同センターで15日から避難生活を続ける。 同じ町内に住む息子夫妻と合計で3ヘクタールの園地を持つ。大雨が降った4日、自宅は無事だったが近くにある「デコポン」のハウスでは、かん水装置が土砂で1メートル以上埋まった。雨が降る中、土砂をかき出し続け、ようやく終えた15日、避難指示が出て、自宅を離れざるを得なくなった。 避難を始めた夜から冷え込みが強まり、長袖の服を用意し、自宅からマットレスを運び込んで寒さと体の負担を軽減する。避難所は自宅に近く、物を取ってくるなど行き来ができるため、今のところ不自由はしていないという。 気掛かりは「デコポン」の園地だ。梅雨明け前には摘果、後には黒点病の防除が必要な時期になる。片付けなどで摘果作業はいつもより遅れている。雨が続いたため、防除もできていない。 16日の夕方は雨が上がり、辺りを夕焼けが包んだ。久しぶりに見たという太陽の光に目を細めた伊藤さんは「今のまま落ち着いてくれれば」とつぶやいた。
摘果に遅れ
同町の平国下地区。区長を務めている鬼塚賢造さん(69)は豪雨被害が出た日から、朝と夜に地区巡回を続けていた。 崩れやすい赤土の土地が多く、雨の影響でゆるんだ地盤が、いつ、どこで崩れてもおかしくない状況だ。 軽トラックに乗り込み、可能な限り見回りをしている。コミュニティセンターにも立ち寄って、避難生活を送る住人に声を掛ける。 自身も、70アールで甘夏や「デコポン」を育てるかんきつ農家だ。だが、被災後は被害状況を確認するために園地に入っただけ。本来なら摘果をする時期だが、「集落には高齢者が多く、一人暮らしをしている人もいる。安否の確認がとにかく大切」と、地区を奔走する。 必要な物や異変は、早く役場につなぐ。集落を出て避難する人がどこへ身を寄せているのか、情報を取りまとめている。「(巡回で)顔を見せるのも、励ましのつもりです」。鬼塚さんは穏やかな声でそう言った。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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