乳幼児向けに販売されている同一のパンを食べた生後10カ月と11カ月の男児2人が窒息する事故が起きていたことが、国民生活センターへの取材で分かった。このうち10カ月の男児は死亡した。同センターは商品の大きさや硬さに問題があったとして、消費者への注意喚起のため近く公表する。製造会社は、事故を受けて対象年齢を10カ月ごろから1歳以上へと改めており、今後、パンを軟らかくしたり、一口で口に入れられない大きさに変更したりする。
事故が起きたのは、大阪府河内長野市のカネ増製菓が製造した「かぼちゃとにんじんのやさいパン」。同社によると、一口大のパン(縦約2・5センチ、横約3・5センチ、厚さ約2センチ)が45グラム分入った商品や、70グラム分入った商品などがある。2商品で2020年は計約190万袋出荷したという。
センターなどによると、昨年3月、沖縄県で生後10カ月の男児がパンをのどに詰まらせて窒息し、病院に運ばれたが死亡した。保護者が目を離したすきに自分でパンをつかみ丸ごと口に入れたとみられる。ふやけたパンがのどの奥まで詰まっていたという。また、今年6月には静岡県で11カ月の男児がのどに詰まらせたがはき出し、命に別条はなかった。
同社の説明によると、45グラム入りパッケージには最初の事故当時、表に対象月齢を「10カ月頃から」と記載し、裏には、「お願い」事項として、のどに詰まらせないために子どもが横になっているときやおんぶしているときは与えないこと、「月齢はあくまで目安」「うまく飲み込めないことがありますので、(中略)必ず大人の方が注意してあげてください」などと書かれていた。乳幼児以外にも食べてほしいとして、70グラム入りの商品にはこれらを記載しなかったという。
しかし、死亡事故を受け、今年2月の製造以降、表に対象月齢を表記せず、「かみきる力の弱い乳幼児や高齢者の方などが、1個丸ごと口に入れた場合に『のど』に詰まらせるおそれがありますのでご注意ください」と記載。また裏面の「お願い」も赤字に変えて、「1歳頃からご使用いただけますが、月齢はあくまで目安」「上手く飲み込めないこともありますので、飲み込み終わるまで必ず注意して見守ってあげてください」などとした。商品は現在も全国のベビー用品を扱う店や通販サイトで販売されている。
センターは調査結果として「ほかの製品と比べ、硬さや大きさの面でのどに詰まるリスクが高かった」。調査に関わった、武蔵野赤十字病院口腔外科の道脇幸博歯科医師も「口の中にいれると唾液(だえき)を吸ってふくらみ、とけにくかった。硬く弾力性もあり、歯が生えそろっていない乳児がかむには難しい製品だった」と指摘する。
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」は、生後9~11カ月の乳児に与える食事の目安を「歯ぐきでつぶせるかたさ」としている。消費者庁によると、乳児向け食品の形状などに関する国の基準はないという。
同社は、昨年6月に日本小児科学会から死亡事故の指摘を受け、事態を把握。2件目の事故発生後にセンターから聞き取りや商品の問題点の指摘があったと説明している。社長は「子どもの成長具合や近くの保育園の園児らに食べてもらうなどの確認をして販売した。お子さんが一個丸ごと食べることは想定していなかった。うちの商品でそういう事故が起こったことは、かなり厳しいことかなと思う。申し訳ない」と話す。
同社は来年1月にも、パンを軟らかくし、1個の大きさを縦約3・5センチ、横約6センチに変更し、「口の中に1個丸ごと入らないサイズにする」という。また小さく千切るための切れ目も深く長く入れるとする。従来品の賞味期限は45グラム入りが180日、70グラム入りが90日だが、回収はせず、順次新商品に切り替えるという。(前田朱莉亜、小林未来)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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