安倍晋三首相(自民党総裁)の後継を決める総裁選では、ほとんどの都道府県連で党員・党友による独自の投票(予備選)が行われる見通しだ。関係者は「幅広い声を届けたい」と準備に追われ、総裁選立候補予定者のお膝元では票の取りまとめに乗り出す動きも。新しい日本のリーダーとなる新総裁への希望を託す計141票の「地方票」の行方が注目される。 ■幅広く意見を 「政治家のためだけでなく党員、党友らの総意をくみとるための重要な選挙だ」。東京都連の高島直樹幹事長は、予備選の意義をこう強調した。 総裁選をめぐり自民党執行部は「緊急を要する」として、党大会を開いて国会議員票と全国の党員などの票(ともに394票)の計788票で選ぶ従来の方式ではなく、国会議員票と都道府県連の代表各3人(141票)の計535票による両院議員総会での選出を選択。これに対し若手議員や地方から「幅広く意見を聞くべきだ」との声が相次ぎ、予備選につながった。 京都府連では4日、スタッフが予備選の投票用紙を兼ねた往復はがきに宛名シールを貼る作業に追われた。西田昌司会長は「できるだけ党員の声を拾い上げるには予備選がふさわしいと考えた」と話した。奈良県連も同日、県内の党員約7500人に投票用の往復はがきを発送。荻田義雄幹事長は「党員が候補者の政策を見聞きしながら対応できる」と述べた。 予備選実施の背景には、入党の経緯も影響しているようだ。山梨県連の皆川巌会長代行は「党員を勧誘するときに『総裁選の投票権がある』と言って集めた。意見を集約し、信頼を維持したい」。栃木県連の木村好文幹事長も「入党をお願いする際、『総裁選に参加できる』と説明してきた経緯がある」と打ち明けた。 ■お膝元では 予備選の方法は、最も得票の多い候補者に持ち分の3票すべてを投じる総取り方式より「なるべく幅広く意見を吸い上げる」(茨城県連の西條昌良幹事長)として、得票数に応じて3票を割り振るドント方式を採用するところが多い。 総裁選立候補予定者の地元では対応が分かれた。 菅義偉(すが・よしひで)官房長官の出身地、秋田県の県連は4日の常任総務会で予備選を実施しないことを決定。菅氏に全3票を投じる方針だ。一方、選挙区がある神奈川県では県連が総取り方式による予備選を実施する。土井隆典幹事長は「できれば全党員に投票させるべきだと今も思っている」と話す。 石破茂元幹事長が会長を務める鳥取県連は4日、ドント方式で行うことを決定。県連は平成20年の総裁選でも予備投票を行い、石破氏が総取り方式で3票を獲得した。石破氏の総裁選対策本部長を務める斉木正一幹事長は「負けるのを見越して選挙はしない。1票でも多くの得票を目指す」として全国の都道府県連に電話で支持を呼びかけることを明らかにした。 岸田文雄政調会長の選挙区がある広島県でも、県連がドント方式で予備選を実施する。「岸田氏が立候補するなら応援する」と意気上がる地元議員の声も聞かれる。 ■コロナと経済の対策を 新リーダーへの期待で最も大きいのは、やはり新型コロナウイルスの感染防止対策と経済・景気対策だ。 兵庫県連の石川憲幸幹事長は「コロナ禍で疲弊している地方経済再生に思い切った施策を打ってほしい」と要望。党員に対し「自民党総裁は総理(首相)にもなる。予備選挙の意味を自覚して投票に臨んでほしい」と呼びかけた。 このほか、「東京への一極集中是正のための思い切った地方活性化策」(滋賀県連)、多発する自然災害を受けて「国土強靱(きょうじん)化の推進」(千葉県連、宮城県連)を求める声も上がる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース