茨城県境町若林の住宅で、会社員、小林光則さん(48)と妻のパート、美和さん(50)が殺害された事件で、事件前にマスク姿の人物が近くで目撃されていたことが29日、関係者への取材で分かった。負傷した家族も「マスクをした男に襲われた」と証言しており、県警境署捜査本部が関連を調べている。事件は30日で発覚から1週間。犯行の手口からは、強い殺意や計画性も浮かぶ。
負傷した中学1年の長男(13)と小学6年の次女(11)は「帽子をかぶりマスクをした男に襲われた」と証言したとされる。一方、捜査本部の聞き込みでは、事件前に同様にマスクした不審者を「近くで見た」などとする目撃証言も得られているという。
関連は不明だが、捜査本部は周辺道路に町が設置するなどした複数の防犯カメラの解析を進めるなどしている。
専門家は手口などから、強い恨みと、緻密に計画を立てる顔見知りの犯人像を指摘する。
犯人は、小林さん方に1階の無施錠の窓から侵入。1階には大学3年の長女(21)がいたが2階に直行したとみられ、長男、次女とは別の部屋で寝ていた小林さんと、美和さんを襲った。夫婦の遺体にはいずれも、刃物による傷が約10カ所あり、心臓などがあって致命傷になりやすい上半身に集中していた。
立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「強い殺意がうかがえる。ターゲットは夫妻で、かなりの恨みがあった」と指摘。さらに、美和さんが110番通報で助けを求めていることを挙げ、「外部への連絡はさせたくなかったはず。夫の殺害に過度に集中していた可能性もある」と分析する。
目立った物色の痕跡はなく、元警視庁捜査1課理事官の大峯泰広氏は「殺すつもりで来ている」との見方を示す。犯人が帽子とマスクを着用していたとみられるのは、「一家の誰かと面識があったので顔を隠したのではないか」と計画性を指摘する。
小林さん方は周囲を木々に囲まれ、付近の住宅から離れた位置にある。周辺住民には、事件後に初めて家の存在を知ったという人もおり、大峯氏はこうした立地からも犯人は顔見知りの線が濃厚とみる。
一方、臨床心理士の矢幡洋氏は「次女には刃物は用いず、スプレーのみを使っている。加害方法を変えたとみられる点が不可解」と述べる。可能性の一つとして「人を殺してみたい」という欲求から生じた「体験殺人」を挙げ、「夫婦殺害で目的を達成し、子供たちに致命傷を与えなかったのではないか」とみている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース