西宮神社(兵庫県西宮市)で10日早朝に執り行われた神事「福男選び」。見事福男の座をつかんだのは初挑戦の3人だった。それぞれの思いを胸に、新春の境内を駆け抜けた。
「一番福」は、追手門学院大1年の高谷望巳さん(19)=尼崎市。陸上部で鍛えた俊足を飛ばし、本殿に一番乗りした。「今までの自分は消極的で福男選びに参加するような性格ではなかった。これを機に色々なことに挑戦したい」
一緒に来た友人は抽選に外れ不参加。まずは背中を押してくれた友人に報告したいという。
「二番福」は鳥取市の消防士、山下慎之介さん(23)。能登半島地震で鳥取市内は震度4。沿岸に津波注意報が出された。元日は非番だったが、手伝えることはないか、周辺に高齢者が多く住む避難所を見て回ったという。
「被災地は大変な状況。自分だけ楽しい思いをしていいのか」。福男選びへの参加も迷ったが、「自分のできることをやろう」。今後被災地に派遣される可能性があり、「被災地に福を持って行くつもりで」参加を決めた。
「三番福」は神戸大4年の多田龍平さん(23)=西宮市。「最初に伝えたい人は」との問いに、迷わず両親、と答えた。アメリカンフットボール部に所属。家から通える距離だが、部活に専念できるよう一人暮らしをさせてもらった。
「迷惑をかけてばかり。おかげで好きなことに思い切り打ち込むことができた」。両親に捧げる感謝の三番福となった。
福男選びは商売繁盛を願う「十日えびす」の神事。午前6時の開門と同時に約5千人が約230メートル先の本殿まで参拝一番乗りを競った。今年は福男による鏡開きや振る舞い酒も4年ぶりに復活。神事はコロナ禍前の姿に戻った。(真常法彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル