「私はオリンピック開催に反対です」――。そんな文言を記したプラカードを街角で掲げ、新型コロナウイルスの感染拡大が続いているのに東京五輪を開こうとする政府に異議を唱えている男性がいる。16日は昼の約1時間、秋田市の秋田県庁前に立ち、通行車両や歩行者に意思表示をした。
男性は、北秋田市出身の元ディスカウント店経営者で、潟上市在住の菊地英雄さん(65)。このコロナ禍、飲食、宿泊業者の中には、時短や休業を余儀なくされ、苦境に陥っている人が多くいるのに、五輪が実施されることに矛盾を感じ、黙っていられなくなったという。
「私たちが県をまたいでの移動を自粛しているときに、政府は海外の五輪関係者を何万人もの単位で入国させようとしている。五輪開催の是非を国民に問うことなく、無理にやろうとする姿勢は不条理そのものだ」と話す。
菅氏に「まともな政治」期待したが
菊地さんは昨年、安倍晋三首相が退陣し、秋田県出身の菅義偉氏が内閣を率いると決まった際、「きっとまともな政治をやってくれる」と期待した1人。菅氏の故郷・湯沢市を訪ね、似顔絵入りの菓子を土産に買ってきたほどだったが、気持ちが冷めてしまったという。「残念だけど、今の菅さんは支持できない」
最初に「1人デモ」を始めたのは9日。段ボールに紙を貼ったプラカードを作り、JR秋田駅前などに立つと、多くの通行人から「体に気をつけて」と声をかけられたり、会釈を返されたりした。「私は五輪に賛成」と伝えてきたのは1人だけだった。
中には、こうした行動の真意を尋ねてくる人もいて、菊地さんは「不条理から目をそむけることは正義の自殺です」と題した文章のプリントを渡した。16日には、高校生らしき若い男性が駆け寄り、ペットボトルの水を手渡す場面もあった。
菊地さんは「私の活動は無言の行そのもので、他の人に同意を求めるつもりはない。でも最近、テレビの街頭インタビューを見ていても、自分の考えをはっきり言わない人が増えていて、気持ち悪く感じていた。こうして自分の意思を示せる人がいることを、多くの人に知ってもらえたら」と話した。(佐藤仁彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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