東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、スポンサー選定などをめぐって大会組織委員会の元理事に賄賂を渡したとして、贈賄罪に問われた紳士服大手「AOKIホールディングス」側の初公判が22日午後、東京地裁であった。前会長の青木拡憲(ひろのり)(84)、前副会長の青木宝久(たかひさ)(76)、前専務の上田雄久(かつひさ)(41)の3被告はいずれも「間違いありません」と起訴内容を認めた。
計15人が起訴された一連の事件で、公判が開かれるのは初めて。受託収賄罪での起訴内容を否認する組織委元理事・高橋治之被告(78)らの公判日程は決まっていない。
起訴状によると、青木前会長ら3人は2017年1月~21年6月、スポンサーへの選定と迅速な契約締結▽日本選手団の公式服装の受注▽大会延期に伴う追加協賛金の減免▽公式ライセンス商品の速やかな承認――などで便宜を図ってもらうよう高橋元理事に依頼。17年10月~22年3月、謝礼として54回で計5100万円の賄賂を元理事が代表のコンサルタント会社「コモンズ」に送金したとされる。
贈賄罪は3年が公訴時効のため、青木前会長らの起訴内容は19年9月以降に提供した計2800万円とされた。
関係者によると、AOKI側は17年9月、コモンズとコンサル契約を結んだ。コンサル料は毎月100万円で、大会閉幕直後に50万円に半減。検察はコンサル料全額を賄賂と認定した。
青木前会長らは、要望をまとめた書面をもとに元理事に便宜を依頼するなどしたとされる。組織委は18年10月、AOKIをスポンサーの一つ「オフィシャルサポーター」に選定し、五輪エンブレム入りのスーツといった公式商品の販売も認めた。
組織委はスポンサー獲得業務を広告最大手「電通」に委託。公式商品の審査などを担う組織委マーケティング局にも電通社員が多く出向していた。
高橋元理事は電通の元専務で、電通側に働きかけてAOKI側の要望を実現したとされる。組織委会長だった森喜朗元首相と青木前会長らの会食の場も設けたという。
組織委の理事は公務員に準じた扱いを受ける「みなし公務員」で、理事の職務に関して金品を受領すると収賄罪に問われる。
青木前会長はコンサル料について、8月に逮捕された当初は「理事としての行為に支払ったわけではない」と賄賂性を否定していたが、起訴時点では賄賂性まで認めたという。
一方、高橋元理事は「コンサル料は五輪とは無関係の他の業務への対価」「組織委理事として特定企業のための働きかけはしていない」などと一貫して起訴内用を否認。保釈も認められず、8月から勾留が続いている。
一連の事件で高橋元理事は4回逮捕・起訴され、賄賂とされた総額は計約2億円に上る。贈賄側はAOKIを皮切りに、出版大手「KADOKAWA」、広告大手の「大広」と「ADKホールディングス」、大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロー」の計5ルートに延びた。最終的に、受託収賄・収賄罪で3人、贈賄罪ではKADOKAWAやADKのトップを含む12人が起訴された。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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