亡き妻が愛用した裁縫針を手に 四国霊場の本尊を点描する夫の巡礼旅

 7年前に亡くなった妻の供養のため、輪切りにした小さな木に四国八十八カ所霊場の本尊を描き続けている男性がいる。細かな点や線を表現するため、手にする道具は妻が愛用した裁縫の針だ。

 作品は400点以上にもなり、遍路道に近い徳島県阿南市のギャラリーで公開を始めた。

 徳島県北島町の佐竹弘さん(76)は妻静子さんを2017年に69歳で亡くした。23歳のときに恋愛結婚した、故郷阿南市の小学校の同級生だった。

 悲しみに暮れる中、静子さんが好きだった柿の木の枝を輪切りにした断面に、ペンで花などを描き始めた。絵を描くのは苦手だったが、黄色の断面の美しさに引かれたからだ。

 しばらくして、仕事で愛媛県を訪れた際に立ち寄った51番札所・石手寺(松山市)で出会った八十八カ所霊場の本尊の絵に感動し、題材にし始めた。これまでに霊場を4回巡り、うち1回は妻が亡くなる3年前に一緒に巡った。当時の記憶がよみがえった。

 作品の原画は、各札所で手渡される本尊を描いた絵「御影(おみえ)」。印刷してカーボン紙と重ね合わせ、直径10~13センチに輪切りした木の断面に載せて少しずつ本尊を写していく。

 材料の木は、美しさや強度から、ヤマモモやウバメガシのほか、ミカン、ツバキなどを試す。枝を乾燥させて厚さ1センチ前後に輪切りにし、さらに乾燥させて断面を磨く。

妻の思い出が詰まった針で

 微細な表現のためにたどり着…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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