亡き父が遺した「ニンジャ」 バイク免許がない娘からの「はなむけ」

 4月13日、haluさん(34)の父が亡くなった。

 末期の膵臓(すいぞう)がんで「余命3カ月」と宣告されてから1年4カ月後。

 1年以上も長く生きたのは、大好きなバイク「Ninja ZX-6R」のおかげだと思う。

 調理師として全国のホテルを渡り歩いた父。

 休みは平日ばかりで、家族で出かけた記憶がほとんどない。

 それでも、父が自宅で作ってくれるカレーは格別においしかった。

 時間をかけてタマネギを炒め、じっくり煮込んだ洋風カレー。

 分量や手順が書かれたメモを参考に作ってみたが、どうやっても同じ味にならない。

 カレーを目にするたびに「もう食べられないのか」と、いなくなったことに気づかされる。

    ◇

 父は数年前から、自宅がある熊本から遠く離れた仙台に単身赴任していた。

 学生時代にバイクに乗っていたそうで、普通二輪免許は持っていた。

 家族に内緒で中型バイクを買い、さらに大型二輪免許まで取ってZX-6Rに買い替えたらしい。

 カワサキのバイクといえばライムグリーンが人気だが、あえて黒を選んだところに父らしさを感じた。

 がんの告知を受けたのは、購入から半年しか経っていないころ。

 休職し、熊本に戻ってきて抗がん剤治療のための通院が始まった。

 ある日、父が「バイクの話ができる人がおらんからつまらん」とぼやいた。

 この言葉に一念発起した娘は…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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