森下裕介
大阪府吹田市の交番で警察官を刃物で刺して拳銃を奪ったとして、強盗殺人未遂などの罪に問われた東京都品川区の無職、飯森裕次郎被告(35)に対する裁判員裁判の判決が10日、大阪地裁であった。公判では、犯行当時の責任能力の有無が争点となったが、渡部市郎裁判長は「限定的だが責任能力があった」と認め、懲役12年(求刑懲役13年)を言い渡した。
判決によると、飯森被告は2019年6月、大阪府警吹田署の千里山交番に虚偽の通報をし、交番から現場に向かおうとした警察官の胸や腕を出刃包丁で複数回突き刺して殺害しようとしたほか、実弾5発入りの拳銃を奪った。
弁護側は公判で、被告の起訴後に精神鑑定を行った医師の証言を元に、犯行時の飯森被告は統合失調症による妄想や幻覚の影響を大きく受けていたと主張。「責任能力があるとするには疑問が残る」として、無罪を訴えていた。
渡部裁判長はこの医師の鑑定結果について、鑑定での被告の供述内容が起訴前と大きく変化しており、幻聴の指示に従って行動したとする被告の供述内容に、鑑定が寄りすぎていると指摘した。
一方で、飯森被告が犯行前に持っていたスマートフォンで交番の勤務態勢を調べたり、警察官の人数を減らすために虚偽の通報をしたりしていたことを挙げ、「被告は臨機応変で合理的な行動を取っており、目的に沿って判断する能力があった」と述べた。その上で飯森被告に限定的な責任能力があったと認め、「拳銃を奪って逃走した危険な犯行で、住民に強い恐怖心を抱かせた」と述べた。(森下裕介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル