企業の株主対応を支援する「アイ・アールジャパンホールディングス」(東京)が業績予想の下方修正を発表する前に、同社株の売却を知人に勧めたとして、金融商品取引法違反(取引推奨)の罪に問われた同社元副社長の栗尾拓滋被告(57)の判決公判が5日、東京地裁であった。世森ユキコ裁判長は「市場の公正性を害した」として懲役1年6カ月執行猶予3年(求刑懲役1年6カ月)を言い渡した。
判決によると、栗尾被告は2021年3月、同社が21年3月期の売上高予想を14%下方修正するという重要事実を把握。下方修正が公表される前の翌4月、交際相手の女性2人に対し、損失回避のために同社株の売却を勧めた。2人は計1万1200株を計約1億8千万円で売却。株価は下方修正の公表後に下落し、計約2300万円分の損失を回避した。
判決は、金融市場の健全性や投資家の信頼を害する「悪質な犯行」と指摘。交際相手の損失回避という動機は身勝手で、「上場会社の役員という責任ある立場の自覚を欠いていた」と批判した。
一方で、副社長を辞任し、起訴内容も認めて反省の態度を示している点を踏まえ、執行猶予が相当と判断した。(植松敬)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル