京アニ再起へ アニメ・映画の新作次々、音楽フェスも

 36人が死亡した京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件は18日で発生から2年が過ぎた。今月は、亡くなったクリエーターの後を引き継いだ新作テレビアニメが始まった。秋には新作映画が公開され、初の音楽フェスも開かれる。徐々に再生の道を歩む京アニに、ファンも期待を寄せる。

 朝日放送やTOKYO MX、テレビ愛知などで7月、「小林さんちのメイドラゴンS」の放映が始まった。

 メイドに姿を変えたドラゴンと、人間との交流を描いたホームコメディーだ。ほのぼのとした日常の中、ドラゴンから見た人間社会の奥深さや、異なる種族の共存といったメッセージも織り込まれている。

 2017年に放映された「小林さんちのメイドラゴン」の続編だ。京アニによると、前作は事件で亡くなった武本康弘さんが監督を、渡辺美希子さんが美術監督をそれぞれ担当した。

 今作では監督を石原立也さん、美術監督を落合翔子さんが務め、武本さんは「シリーズ監督」としてクレジットされている。

 京アニの八田英明社長は18日の会見で、「メイドラゴンは武本康弘監督として作り上げ、2期についてもほぼ構成もシナリオも、武本くんの腕で完成していた。シリーズ監督はクレジットとして当然のことだと思う」と話した。

 石原さんは番組サイト(https://maidragon.jp/2nd/)に寄せたコメントで「引き継がせていただくなら私以外にはいないだろうと、そういった想(おも)いもあり」と心境を明かした。

 さらに「以前、武本さんも話していましたが」として、相いれない異種族が「それでも一緒にいる、そういった束(つか)の間の時間を描いている点が根底にある」と、作品が大切にしている点を説明している。

 9月には、京アニの新作映画「劇場版 Free!―the Final Stroke―」前編が公開される。事件後に完成、公開される映画としては20年9月公開の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」に次いで2作目だ。

 水泳に打ち込む青年たちの青春と絆を描いた人気シリーズの最終章で、クリアファイル付きの鑑賞チケットが販売中だ。

 新作のキャラクターデザインを誰が担当したかは未発表だが、過去のシリーズのキャラクターデザインは、事件で亡くなった西屋太志さんが務めていた。

 11月20~21日にはロームシアター京都(京都市左京区)で、「KYOANI MUSIC FESTIVAL」が開催される。「京都アニメーションファン感謝イベント」としては5回目で、初の音楽フェスとなる。「感動を未来へ」をテーマに開く音楽ライブイベントになるという。

 八田社長は18日の会見で、「ファンがあってものづくりができています。多くのパッケージを購入いただいたり、メッセージをいただいたりすることに大変感謝しています」と話した。(華野優気、後藤泰良)

京アニ応援する会、事件後立ち上げ「考えない日はない」

 「京アニのことを考えない日はない」。2年前、フェイスブックで「京都アニメーションを応援する会」をつくった医療法人職員の福浦憲之さん(65)=京都市右京区=はいう。京アニに魅了されて10年以上という大ファンだ。最近の京アニの動きに、「再建の道を着実に歩んでいる」と喜びを感じている。

 2010年ごろ、軽音楽部の女子高生たちを描いた深夜アニメ「けいおん!」を偶然見て魅力にとりつかれた。学生のころのなじみの場所が写真のように精緻(せいち)に描かれていた。自身も学生時代にバンドをしており、監督がたまたま同じ大学の後輩だったことも、作品への共感を高めた。

 今月放映が始まった「小林さんちのメイドラゴンS」は心待ちにしていた作品だ。「事件で制作が途絶えていた作品の一つ。オープニングのテロップに武本康弘さんの名前があった。犠牲になった同僚の遺志を引き継いで作品を完成させたんだなと感慨深かった」

 新作映画「劇場版 Free!―the Final Stroke―」前編にも期待を高める。「事件後にスタッフを代えて完成させた作品がどう仕上がったかが楽しみ」

 毎日、京アニ作品を見ることを欠かさない。「京アニは見る人に夢と希望を与えてくれるアニメーション会社。もっと多くのアニメーターを育て、多くの作品をつくり、日本アニメの中核に戻ってきてほしい」。いつもそう願っている。(高木智也)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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