京アニ犠牲者公表、実名の意義は 決定権は事実上警察に

 京都市伏見区の「京都アニメーション」第1スタジオが7月18日に放火された事件は、発生から3週間以上が過ぎても犠牲者35人のうち25人の氏名が公表されていない。京都府警は遺族への丁寧な説明を重ねつつ公表時期を探っていく構えで、今月下旬以降になる公算が大きくなっている。

 府警幹部によると、葬儀や四十九日を静かに迎えたいという遺族の気持ちなどを重視し、公表に時間がかかっているという。府警は遺族に「重大事件で公益性がある」と説明したうえで8月2日、犠牲者10人(当時22~61歳)の氏名を公表。残る25人の公表についても、遺族や京アニに理解を求めていくという立場だ。

 京アニ側は7月22日、「プライバシーが侵害され、ご遺族が甚大な被害を受ける可能性がある」として、実名公表を控えるよう文書で府警に要望。ただ、時期について、代理人弁護士は今月7日、「実名報道を控えていただきたい旨を希望しているのは、もっぱら開示される時期の問題」「永久にお控えいただくよう、お願いしているものではない」と説明している。

 府警幹部は「警察庁とも協議しながら遺族に丁寧に説明し、その心情に配慮しながらタイミングを決めたい」と話している。

決定権は事実上警察に

 今回の事件では、犠牲者10人の氏名公表まで2週間余りかかった。京都府警は遺族感情などに配慮しつつ、「広報方法とタイミングについて慎重に検討を進めた」(幹部)と理由を説明している。

 公表を受け、報道各社は犠牲者の氏名を報道。朝日新聞も名簿を掲載し、「お一人お一人の尊い命が奪われた重い現実を共有するためには、実名による報道が必要だと考えています」などとする一文を載せた。事実を歴史に記録するメディアの役割などから実名報道を原則としており、匿名で報じるのは性犯罪の被害者らに限っているためだ。

 2005年に閣議決定された犯罪被害者等基本計画では、被害者の実名を公表するかは「総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮する」と規定。決定権は事実上警察に委ねられた。

 これまでの運用では、殺人事件などの被害者については実名が公表されるのが一般的だ。ただ、事件ごとに事情が違うため、警察庁は、都道府県警が遺族の意向などを十分に考慮してケース・バイ・ケースで判断するとしている。

 今回の実名公表ではネット上で…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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