京大が霊長類研元所長を提訴 不適正支出めぐり2億円の賠償求める

才本淳子 北村有樹子

 国内外のサル研究をリードしてきた京都大霊長類研究所(昨年3月に解体)での研究資金の不正支出問題をめぐり、京大が所長を務めた松沢哲郎・元特別教授=懲戒解雇=を相手取り、2億円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴していたことがわかった。提訴は昨年10月28日付。今月24日に第1回口頭弁論が開かれる。

 訴状によると、松沢氏を代表とする研究事業が、2010~12年度に日本学術振興会の補助金交付の対象となった。しかし、同振興会は、チンパンジー研究用の大型ケージの一般競争入札で、ケージの仕様策定に関わっていた業者が入札に参加したのは入札妨害に当たるとして、補助金の一部を取り消し、交付済みの分の返還命令も出した。

 京大側は、松沢氏が仕様策定作業の多くを部下に担当させ、資格のない業者が入札に参加するのを黙認し、入札の公正を害したなどと主張。京大が同振興会へ返還した約3億6100万円(罰金に当たる加算金を含む)のうち、2億円の支払いなどを求めている。

 松沢氏の代理人弁護士は「手続き違反の入札や補助金返還は組織として京大が行ったことだ。大学の責任を無理やり個人に押しつける不当な訴訟だ」として、請求棄却を求める考えを取材に示した。

 京大は「係争中の案件でもあるので、この事案に関してのコメントは差し控える」と取材に回答した。

 霊長類研について、会計検査院は20年11月に発表した検査結果で、11億円余りの不適正な支出があったと発表。京大は同年、特別教授だった松沢氏らを懲戒解雇した。松沢氏は京大を相手取って21年、解雇の無効など地位確認を求める訴えを京都地裁に起こしており、係争中だ。

 霊長類研は1967年設立。国際的にも知られてきたが、問題を受けて22年3月に解体。同年4月からは「ヒト行動進化研究センター」などに再編された。(才本淳子 北村有樹子)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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