京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の元教授(65)が、大麻の合法的成分の効果を調べた論文で、研究手法について大学の倫理委員会の承認を得ていなかったことがわかった。さらに大学側は元教授に論文の元データの提出を求めたが、ほとんど出されなかったため、「データを捏造(ねつぞう)した疑いがある」として、調査を始めた。元教授は朝日新聞の取材に対し「捏造はしていない」と主張している。
京大関係者によると、問題の論文は、発達障害に詳しい正高(まさたか)信男・京大霊長類研教授(当時)が2019年11月に発表した。大麻の合法的成分で、国内ではサプリメントのように食品として市販される「カンナビジオール(CBD)」が、対人関係をうまく築けない社交不安障害に効果があるか、国内の18、19歳の男女計40人で調べたという。
当初、この研究手法が承認を得ていないとの指摘があり、学内で調査が始まった。その過程で、大学側が正高元教授に複数回、論文の元データを求めたが、研究ノートなどの記録が提出されなかったという。
研究の世界では、元データなどを記録したノートが重要視される。そのため関係者によれば霊長類研は「データを捏造した疑いがある」として、京大本部に報告。調査委員会を設置し、捏造の有無を含めて調べるとみられる。
「研究は行った。捏造していない」
正高元教授は朝日新聞の取材に倫理委の承認を得ていなかったことを認め、「薬ではなく食品扱いなので、問題ないと思っていた」と話した。データについては「研究は行った。ノートというものはないが、(研究参加者に回答してもらった)書類はあり、捏造はしていない」と反論した。
京大本部の広報課は朝日新聞の取材に、「事実の有無を含め、答えは差し控える」と回答した。
正高元教授は認知心理学が専門で、サルやヒトなどのコミュニケーションを研究。ベストセラーとなった「ケータイを持ったサル」(03年、中公新書)など多数の著作がある。(野中良祐)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment