東京都調布市内を走る京王線の電車内で2021年10月、乗客を刺し、車内に放火したなどとして、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた無職服部恭太被告(26)の裁判員裁判で、東京地裁立川支部(竹下雄裁判長)は31日、被告に懲役23年(求刑懲役25年)の判決を言い渡した。「自分勝手な理由から起こした無差別的な犯行で、凶悪で卑劣と言うほかない」と述べた。
起訴状などによると、服部被告はハロウィーンだった21年10月31日の午後8時ごろ、京王線の特急電車内で男性(当時72)の胸をナイフで刺して重傷を負わせたほか、ライター用オイルをまいて火を付け、近くにいた乗客12人を殺害しようとしたとされる。男性は一時、心肺停止になった。
判決は、12人のうち10人については殺人未遂罪の成立を認めたが、残る2人は、点火した時点で離れた場所におり、現実的で具体的な危険性があったとはいえないとして、罪は成立しないと判断した。
被告人質問などによると、服部被告は21年6月、勤務先の携帯電話会社で、客からのクレームをきっかけに異動を命じられた。同じ頃、かつて交際した女性の結婚を知り、自殺願望を抱いたという。
しかし、過去にも自殺を考えて失敗したことがあったため、殺人事件を起こして死刑になることを計画した。人が集まるハロウィーンの渋谷での無差別殺傷事件を考えたが、21年8月に小田急線で発生した刺傷事件をきっかけに、走行中の電車内での放火殺人を計画するようになったという。
放火めぐる認識が争点
服部被告は犯行時は米国の人気映画シリーズ「バットマン」の悪役「ジョーカー」をまねた服装をしていた。この点について被告は「(死刑になるために)殺人を犯さないといけないという思いがあった。ジョーカーを目標にすればいいんじゃないかと思った」と語った。
主な争点は、放火が周囲の乗客12人に対する殺人未遂罪にあたるか、だった。
検察側は、具体的にどの乗客を対象にするかが定まっていなくても、列車の連結部分付近にとどまるなどしていた12人が死亡する危険性を認識した上で火を付けたとして、殺意は認められると主張した。
一方、弁護側は、服部被告がオイルをまいた床にライターを投げた時点では、12人は死亡の可能性のある危険な場所からは退避しており、罪は成立しないと反論。量刑は懲役12年程度が相当だと訴えていた。(宮脇稜平)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル