京都の山あいの町、投票所半減案の衝撃 きっかけは台風、検討今しか

 この約20年で全国で約1割減ったもの。それは選挙の投票所の数だ。多ければコストがかかり、少なければ住民の権利に関わるから、どれくらいの数にするかの判断は難しい。山間部を抱える京都府南丹市では、半分近く減らす案を検討しており、住民の間で物議をかもしている。

 南丹市で市議選の投開票があった今月6日朝、福井県に隣接する同市美山町知見(ちみ)地区を取材で訪れた。昔ながらのかやぶき屋根の家が立ち並ぶ「かやぶきの里」から車で約20分。市内で最も雪深い地域の一つとして知られる。

準備は雪かきから

 投票所になった知見公民館では午前6時過ぎ、投票管理者と立会人を務める地区役員3人が集まり、準備を始めた。まずは雪かきからだ。

 そうして待つ有権者は41人。実際は、住民登録をしたまま市外で暮らす人や施設に入っている人もいるため、30人程度という。

 午前7時過ぎ、4人が立て続けに投票に来た。「おつかれさま」。投票所に詰める立会人や市職員が顔見知りのためか、笑顔でそう声をかけていく。

 その後は午前10時過ぎまで誰も来ず。「来はらへんねぇ」。誰からともなく、そんな声が漏れる。投票は午後6時までだが、昼前に来た投票者が最後となった。

 昨年10月の衆院選で投票管理者を務め、今回は立会人を務める畠中登さん(49)によると「午後3時を過ぎると、ほとんど来ない」。

スタッフ確保に限界

 市の投票所再編案によると、市の面積の半分以上を占める旧美山町エリアは、21カ所ある投票所が半分以下の10カ所になる。

 知見地区の住民は、公民館から約4・5キロ離れた投票所か、投票日前に公民館に来る移動式の投票所で投票することになる。

 立会人の一人、前谷浩禎(ひろよし)さん(58)は再編案に衝撃を受けたと話す。交通手段のない高齢者が多いからだ。「投票率は下がるでしょうね」。投票管理者の牛岩未来大(みきひろ)さん(47)は「私たち(スタッフ)の負担は減るが、お年寄りのことを考えると」と複雑な表情を見せた。

 住民はどう受け止めているのか。

 家から10分かけて歩いてきたという女性(85)は「これ以上遠くなったら、よう行かん」ときっぱり。運転免許を返納したという男性(92)も「もう歩かれへん」。

 ただ、立会人などの投票所スタッフを務める人材が地区では限られるのも事実だ。

 役員の男性(60)は「この人口で投票所を維持してもらっているのはありがたいが、子どもや地域の行事もあるなかで、(投票所も)同じ人間で回してきた。費用対効果を考えると、今後は(再編も)仕方がないのかもしれない」と話した。

市が投票所の見直しを検討したのは、京都府内を襲った2017年の台風21号がきっかけだったと言います。記事後半では、全国的にも投票所が減りゆく状況を、都道府県ごとの一覧表で示します。

 市が投票所の大幅削減案を提…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment