東京パラリンピックの選手村で8月、自動運転の電気自動車が選手に接触する事故があった。事故で浮かび上がったのは、人による操作とシステムによる操作を使い分ける自動運転の難しさだった。
「実社会に非常に近い状況で起きた。様々な人が行き交う一般道での課題が見えてきた」。「他者との共生」を意識し、自動運転の制御システムに関する研究をする名古屋大大学院の鈴木達也教授はこう話す。
事故は8月26日昼に起きた。警視庁によると、視覚障害のある男子柔道の日本代表選手が横断歩道を歩いていたところ、自動運転のバス「eパレット」と接触した。選手は転倒し、2週間のけがを負った。現場は一般道ではなく、関係者以外は立ち入れない。
「eパレット」は、トヨタ自動車が「次世代の自動車」として開発した。五輪とパラリンピックでは選手の送迎などに使った。事故の翌日には豊田章男社長が、自社のオウンドメディア「トヨタイムズ」やオンライン記者会見で状況を説明した。
トヨタによると、バスは右折する際、交差点内の人を感知して停止した。バスに乗っていたトヨタ社員のオペレーターが交差点の周辺を確認したところ、誘導する警備員が選手を制止しているように見えたので発進させたという。
直後、横断してきた選手をセンサーが検知し、自動ブレーキが作動した。オペレーターも手動の緊急ブレーキを使ったが、バスが完全に止まる前に時速1キロほどで接触したという。
トヨタは事故を受け、誘導する警備員なども含めた安全対策ができるまで運行を取りやめた。「信号のない交差点での安全確保は、歩行者、オペレーター、誘導員の三位一体で仕組みを改善する必要があると判断した」としている。
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鈴木教授が挙げる「一般道の課題」とは何か。
国土交通省によると、自動運…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル