昨年7月の豪雨災害で熊本県人吉市の自宅を失った郷土史家が、鎌倉時代から約700年にわたり人吉球磨地域を治めた相良(さがら)家の37代当主・頼綱(よりつな)(1876~1966)の風変わりな生涯を小説にし、出版した。災害前に書きためた原稿データが流失を免れ、日の目を見た。
人吉市文化財保護委員を務めた益田啓三さん(71)は、昨年1月から半年かけて『小説 肥後人吉藩残照』(人吉中央出版社)を執筆し、最終校正にかかろうとした矢先に水害に遭った。創業97年だった老舗の靴店兼住宅は水没し、原稿の資料なども失った。
屋根から逃げて命は助かり、水がひいてからは泥やがれきの後片付けに追われた。本のことは一時忘れていたが、泥をかぶって使えなくなったパソコンが出てきて思い出した。出版社に問い合わせると、事務所は一部浸水したが、原稿データは無事だった。
「ヘドロとの戦いに疲れ落ち込…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル