人波消えた週末 外出自粛「テレビで見る渋谷と違う」

 「外出自粛要請」の週末が28日、首都圏一帯で始まった。不要不急の用事では出歩かないでという知事らの求めに、店の閉まった繁華街や観光地からは人波が消え、駅やバスターミナルでは移動に不安を抱く人たちの姿が。新型コロナウイルスの感染拡大は防げるのか。

「まるで雪が降った日のよう」

 東京・渋谷。

 駅前のスクランブル交差点は午前11時を過ぎても、人通りは少なかった。いつもなら、信号を待つ間も肩が触れあう混雑ぶりだが、西口付近で新聞や雑誌の売店を約30年間営む男性(71)は「まるで雪が降った日のよう」と話した。

 大型スクリーンには時折、感染防止対策を訴える小池百合子都知事の動画が流れる。若者が集まるSHIBUYA109や渋谷パルコなどの商業施設も臨時休館となった。

拡大する新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、週末の営業を取りやめた商業施設の入り口はシャッターが下ろされていた=2020年3月28日午前10時16分、東京都渋谷区、内田光撮影

 就職した長男(22)の引っ越しを手伝うために、北九州市から夫(54)、次男(14)と共に上京した女性(56)は「テレビで見る渋谷と全然違い、びっくり」。新型コロナウイルスの感染が広がる東京に来ることに心配もあったが、その中で新生活を始める長男のことのほうがもっと心配だという。「近所のスーパーの品ぞろえをチェックしたいし、この外出は『不要不急』じゃないと思っています」と話した。

「自粛要請?関係ない」

 一方、ビジュアル系のバンド仲間といた男性(21)は「外出自粛要請なんて関係ない」。前日から夜通し、新宿や渋谷などで遊んでいた。3人とも黒いマスクをしていたが、感染拡大防止のためではなく「今日はノーメイクだから。メイクしている時はマスクしない」と話した。

拡大するスーパーの前は、開店を待つ人たちが並んでいた=2020年3月28日午前8時54分、東京都墨田区、池田良撮影

新宿も閑散

 新宿駅南口の「バスタ新宿」。全国と1日1500本の高速バスで結ばれるターミナルだ。

 従業員によると例年、この時期の午前中は、花見客や春休みの学生、外国人観光客などで、すれ違えないほどごった返すという。

拡大する交通ターミナル「バスタ新宿」に向かう人たち。スーツケースを引く人の姿はまばらだった=2020年3月28日午前9時46分、東京・新宿、藤原伸雄撮影

 だが待合室は閑散としていた。椅子も空席が目立つ。「こんなに人が少ないのは初めて。いつもの1割以下かも」と従業員。

 長野発のバスから親子が降りてきた。娘(20)は地元の専門学校を卒業し、この春から東京で美容師になる。母(49)は引っ越しを手伝いに来た。

拡大する井の頭恩賜公園は、外出自粛要請を受け、園内の一部が通行止めとなった=2020年3月28日午前9時21分、東京都、山本裕之撮影

 新型コロナウイルスの感染が広がっている地域への往来はできるだけ控えて、と長野県の阿部守一知事が求めたのは26日だ。母は「こんな時にうしろめたいが、来週から働かねばならないので仕方ない」。バスには8人しか乗っていなかったという。「こんなにすいてるとは思わなかった」と話した。

 静岡県の男性(52)は、都内の大学に入る息子のかわりにアパートの契約をしにやってきた。「本当は息子と一緒に来たかったが、東京は感染者が増えている。契約が終わったら、すぐに帰ります」

拡大する外出自粛要請が始まった週末、浅草・浅草寺の参道は人出がまばらだった=2020年3月28日午前11時3分、東京都台東区、池田良撮影


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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