28歳の冬だった。スペイン・バルセロナの書店で働いていたアンナ・フォルニエレス・オルティさん(35)は、年越しを一緒に過ごしていた友人から、1枚のチケットを受け取った。
「新しい年だから、アンナにも新しいことをしてほしい」
陶芸体験のチケットだった。「幼い頃、土に触れるとほっとした」。アンナさんの言葉を覚えていたからこその、贈り物だった。
スペイン・カタルーニャの州都バルセロナで生まれ育ったアンナさん。本が好きで、小さい頃は毎日のように図書館に通った。休日は静かな森に囲まれた田舎の祖父母の家で過ごした。
高校時代、図書館で何げなく室町時代の画僧・雪舟の画集を手に取った。墨色ひとつで細部まで表現する水墨画に驚き、無心にページをめくった。
これが日本の芸術との「出会い」だった。
大学では世界文学を学び、書店に就職した。日本の文学や芸術に関する書籍も読みあさっていた。
片道航空券を手に日本へ
チケットを手に行った初めて…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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