人襲うサル、同一犯? 2カ月で25人、食べ物目的じゃないならなぜ

 8月以降、北九州若松区でサルに人が襲われる被害が続いている。市は群れから離れたハナレザルとみているが、通常は短期間で群れに戻るとされ、長期化している理由は謎だ。市は18日、関係者を集めた初の対策会議を開き、今後ワナの数を増やすなど対策を強化することを決めた。

 最初に被害が報告されたのは8月7日。有毛地区で農作業中だった30代の女性がズボンの上から下半身をかまれた。以降、若松区では、小学生や女性を中心に、かまれたりひっかかれたりする被害が相次ぎ、10月25日までに24件25人の被害が確認された。

動物の赤ちゃんさらう被害も

 同区の響灘緑地グリーンパークでは、サルが園内で飼育動物に近づいたり動物の赤ちゃんを一時的にさらったりする被害もあった。

 目撃情報は同区だけで10月末までに324件、市全体では487件に及ぶ。2015年度以降、毎年37~243件確認されていることと比べても格段に多い。

 市によると、大きさなどの特徴から、4歳ほどのオスで、同一個体とみられている。オスは一般的に、発情期前の夏ごろに群れを離れ単独行動をする習性があるといい、今回もハナレザルの可能性が高いという。

 市南部周辺や香春町を中心に活動する群れが過去に確認されており、市はその群れから離れたとみている。ハナレザルは通常秋から冬にかけて別の群れと一緒になったり、群れをつくったりするという。市の担当者は「自然に戻ってくれるのが人間にとってもサルにとっても理想」と祈る。

 だが、11月に入り、川を隔てた遠賀町でも目撃された。市の担当者は「長期間におよび、行動予測が困難になっている」と嘆く。

捕獲も失敗続き

 捕獲も失敗続きだ。8月にワナを2基設置したが捕獲できず、9月に目撃情報が相次いだグリーンパーク内に移した。当初はワナ内にバナナを置いたが、専門家に「食べたことのないものは食べない」と指摘され、食べた痕跡があったアケビを入れたこともあったが、食いつかなかった。

 一方、畑を荒らすなどの食害報告はほとんどない。「街中で食べ物は調達できているのでは」と担当者はみている。食べ物目的ではないとすれば、なぜ人に危害を加えるのか――。

 一般的にハナレザルは警戒心が強く、人を襲わないという。市の担当者は「個体の個性で、ちょっかいをかけているのでは」。

 ただ、専門家も入って行われた18日の会議では、「ハナレザルではなく迷いザルでは」といった意見も出たという。迷いザルは、群れとはぐれてしまった子どものサルのことだ。

 一方、大きさからやはり発情期前のハナレザルだとの指摘もあり、市の担当者は「ハナレザルが群れと長く離れるうちに、何かしらの理由で戻れず、迷いザルのようになってしまったのかも」。真相ははっきりしない。

 冬にかけて発情期を迎え、凶暴化することが予想される。2~3年たって体が大きくなれば危害の程度も深刻になる懸念がある。

 市は今月中にもワナの数を5基に増やし、大型のワナも別に設置する予定だ。群れに戻る可能性のある1、2月ごろまでは様子を見るが、被害が収まらなければ麻酔銃の使用も検討するという。(城真弓)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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