人類未踏のルートで単独南極点到達に挑戦していた秋田市出身の冒険家、阿部雅龍(まさたつ)さんが27日、脳腫瘍(しゅよう)のため死去した。41歳だった。葬儀は近親者のみで行った。所属する人力チャレンジ応援部(神奈川県大和市)が後日、お別れの会を開く予定という。
阿部さんは秋田大在学中から冒険活動を開始。2019年1月、単独で918キロを歩き、南極点到達を果たした。
21年11月には、同じ秋田県出身で、日本人で初めて南極に上陸した白瀬矗(のぶ)陸軍中尉らが果たせなかったルートに、単独・無補給徒歩で挑戦した。食料など100キロの荷物を積んだそりを引き、山脈やクレバス(割れ目)が多い約1300キロの行程で南極点到達を目指したが、22年1月に悪天候などのため、約780キロ地点で断念。再挑戦を公言していた。
同年、世界的冒険家の功績をたたえて創設された「植村直己冒険賞」を受賞した。
再挑戦の南極遠征直前だった昨年9月、阿部さんは自身のSNSで脳腫瘍が見つかったことを報告。緊急入院して手術を受け、闘病していた。
阿部さんは手術を受ける前、当時のSNSなどで「過去最高難易度の冒険に出ることになりました」と心境を吐露。「南極と違い、自分が望んだ冒険ではないけれど、病気という冒険に自ら勇気を持って立ち向かいます。今までどんな逆境にも負けずに笑顔で立ち上がってきました。自分の夢の実現のために挑みます」とつづっていた。(滝沢隆史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル