熱を帯びる囲碁将棋界の裏で、ボードゲーム「バックギャモン」の日本勢が世界を席巻している。今年インターネット上で開かれた国別団体戦で日本は優勝。個人プレーヤーの世界ランキングも上位10人のうち3人が日本人だ。愛好家たちは「コロナ禍でオンライン対戦が増える中、在宅ワークしながら世界の頂点に立つことも夢じゃない」と入門者を歓迎する。
日本チームは1月に欧米など33カ国が競う「オンライン・チーム・チャンピオンシップ2020」で8年ぶり2度目の優勝を飾った。メンバーは池谷直紀さん、市川勝規さん、西川清一さん、名城健太郎さん、上田英明さんの、10~40代の5人。学生、会社員など職業は様々だ。9月から約2週間に1度のペースで、各自がパソコンで一対一のネット対戦に臨み、全55試合でデンマーク、モルドバ、ペルー、トルコ、ジョージア、チェコ、ギリシャ、ブルガリア、ドイツ、ノルウェーを破った。
拡大するバックギャモンボード。2012年の日本選手権。下平憲治さんと矢澤亜希子さんの決勝戦。協会立ち上げ時に「串処最上」から100台提供を受けたうちの1台。
バックギャモンはすごろくの一種。起源は古代メソポタミア文明やローマ帝国にさかのぼるとも言われる。2個のサイコロを振って15個のコマを動かし、相手より先に全てのコマをゴールさせた方が勝つ。チェス、トランプ、ドミノと並ぶ「世界4大ゲーム」で、現在のスタイルは1960~70年代のアメリカで形成された。日本では80年代前半、ボードゲームの発売でブームになった。
愛好家で組織する団体「日本バックギャモン協会」によれば、世界の競技人口は欧米を中心に約3億人なのに対して、日本は推定20万人。にもかかわらず、世界ランキングは、1位望月正行さん、2位景山充人さん、6位矢澤亜希子さんと、トップ10のうち3人を日本人が占める。3人とも、レッスンや試合の報酬などで生計を立てるプロのプレーヤーだ。この3人を含まない5人が今回、日本チームとして優勝したことで、世界にますます「層の厚さ」を見せつけることになった。同協会は3月から一般財団法人となり、プロリーグのスタートも予定している。
囲碁将棋界にも猛者は多く、2019年に国内タイトル「バックギャモン王位」を獲得したのは、将棋の森内俊之九段だ。
森内九段はバックギャモンの魅力を「計算の大切さと、未来の不確実性が併存しているところ」と語る。将棋の経験が生きるのは「論理性を軸に戦うところと、勝負の呼吸」。逆に、バックギャモンの考え方が将棋に生きるのは「タイミングについての考え方」だという。森内九段のユーチューブ「森内チャンネル」では、バックギャモンのルールが初心者にもわかりやすく解説されている。
40代、将棋アマ3段 転機は6年前
拡大するバックギャモン日本チーム主将の池谷直紀さん
主将の池谷直紀さん(47)は将棋アマチュア3段だが、「将棋では早い段階から自分の限界を感じていた」という。
だが6年前、転機が訪れた。息…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル