部活動の生徒たちが下校したころ、北九州市立城南中学校の敷地内にあるプレハブ棟に、明かりがともる。
「こんばんは」
「はい、こんばんは」
机や椅子が並ぶ教室の真ん中で、10人ほどの生徒たちに囲まれ談笑する男性の姿があった。
元教員の林静一路(せいいちろ)さん(89)。城南中学「夜間学級」が設立された1998年から運営に関わる1人だ。今もボランティアとして、変わらず数学の授業を受け持つ。白髪交じりの生徒たちの中でも、一番の高齢になった。
米寿を超えても、教壇に立ち続ける理由がある。
ビリビリに破られた学級目標
林さんは55年、当時の小倉市の中学校教諭として新規採用された。戦前の教育が色濃く残る時代。精神論が身にしみていた。生徒たちに示した学級目標は「努力に勝る天才なし」。「勉強がわからないのは、お前が勉強しないからだ」。そんな言葉を生徒たちにぶつけることもあった。
2カ所目の赴任校で中学3年の担任になり、同じ目標を書いた紙を教室に掲げた翌日、ある男子生徒にビリビリに破られた。
「俺たちは、努力してもできないことがあるんだ」
その生徒は被差別部落出身の生徒だった。
「恥ずかしながら、それまで…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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